ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇」

150525 原題:NARCO CULTURA (麻薬文化?)

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あの辺りで「皆殺しの・・・」と来れば、古くは「アラモ」、すこし後に「リオ・ブラヴォー」で使われた「皆殺しの歌」を思い出す。多分、この邦題はこれにひっかけたんだろう。バラッドは、一般的にはバラードだろう。実際の発音はその中間だけど、この表記には違和感がある。それにしても、その後の、「・・・光と闇」って!!光なんかあるわけ、ないだろう!

イスラエル人の報道カメラマン、シャウル・シュヴァルツが執念で密着して撮り続けたドキュメンタリー。主役の片方は、ロサンゼルス在住のメキシコ系アメリカ人歌手とその仲間で、麻薬ギャングを扱う歌、いわゆるナルコ・コリード(麻薬物語とでも訳せばいいのかな)で人気上昇中。その歌詞たるや、ぶっ殺せだのなんのと、そりゃ物騒極まりないものだが、そこが逆に大受け。時には本物のギャングから自分たちの歌を作って欲しいと依頼されたり、すっかりあの界隈では人気者。メキシコ系でも、メキシコに行ったことがないから、箔をつけようと、麻薬の本場、メキシコのクリアカンに行こうと仲間を誘う。

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⬆︎生前、荒稼ぎしたギャングたちの墓場だ。豪華な宮殿風の墓が林立するなんとも奇天烈な風景だ。

一方、テキサス州エル・パソとリオ・グランデ川を隔てて向き合うシユダー・フアレスの警察官リチ・ソトは、日々身に迫る危険を感じながらも、長年生活している故郷に強いこだわりがあり、世界で最も危険な町で、献身的に業務をこなしている。既に同僚の何人もが麻薬ギャングに殺害されている。また、最近、「さっさと署長を辞任しないと、今日中にお前を殺す!」と組織に脅された地元警察署長が辞めたばかり。もはやこの職にはなり手がいないという現状を、どう解決するのか。

川向こうでは、人々が穏やかに生活しているというのに、何という違いだろう。人々は口々に嘆くだけで、今日も日が暮れていく。

この無法地帯のひどさは、いろんな形で日本でも報道されているから、およそのことは知っていたが、こうしたドキュメントを見ると、本当にやりきれない。分かっていて何もできない地元行政、国って、何のためにあるのかと、つくづく考えてしまう。

#36 画像はALLCINEMA on lineから