ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「あん」

150608 カンヌ国際映画祭出品作で、話題になった作品。樹木希林の演技と河瀬直美監督作品ということで、さっそく見に行った。

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ドリアン助川の原作を河瀬直美が脚本に仕立て、映画化にしたもの。

⬆︎あん作り、50年の経験も持つ徳江(樹木希林)は指に障害を抱えている。ある日、たまたま通りかかった駅前の小さなどら焼き屋、中でせっせと皮を焼いている若い店長、千太郎(永瀬正敏)の表情を遠目に追いながら、なぜか気にかかる。外は桜が満開だ。

店員募集の張り紙があったので、後日思い切って、応募してみるが、年齢的な問題で、採用見送りに。諦めきれず、再び店長を訪問するが、結果は同じ。そこで、自分の作ったあんを置いていく。一口なめた千太郎、プロの味に驚嘆、頃合いを見計らうかのように再び現れた徳江に手伝って欲しいと告げる。こうして、なにやらわけありそうな雰囲気の二人の交流が始まるのだった。

周辺の空気、風、音、光を丹念に拾いながら、それでいてけっして饒舌にならず淡々と二人の心の交流を綴っていく河瀬の”目”が素晴らしい。心ない経営者(浅田美代子)の一言、これに反発するかのように徳江を解雇することなく、どら焼きを愚直に作り続ける千太郎。

一時は行列ができるほどの評判を呼びながら、気がつけば、すっかり客足を遠のいてしまったどら焼き屋。二人にはお互いになにも言わなくても理由は分かっている。辞めていった徳江を施設に訪問する千太郎・・・徐々に二人の過去が明らかに

無口で無愛想な千太郎を演じた永瀬正敏も見事だが、やはりこの作品、樹木希林がいなければ、映画になっていなかったろう。

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カンヌ国際映画祭での御一行。中央、カーペットと同じ色の衣装をまとっているのは、樹木希林の孫、内田伽羅

#39 画像はALLCINEMA on lineから