ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「福島 生きものの記録」

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よく出来た記録映画である。シリーズ第3弾。今回は、「拡散」という副題がついているように、文字通り放射線が”拡散”していった地域の家畜を中心とする小動物のその後を追った構成。想像をはるかに超える実態を目の当たりにして、胸のつぶれる思いに捉われる。

朝日の朝刊にずーっと連載されているコラム「プロメテウスの罠」はずーっと読んでいるが、ちょうど現在は「希望の牧場」の項25回。この日(6/29)は『絵に吐き出してやる』という見出しで、「希望の牧場」経営者、吉沢正巳が怒りや、やるせない思いのたけを聞き手である画家、吉田尚令(ひさのり)と作家、森絵都(えと)にぶつけ、それを絵に描き出そうと吉田尚令が決意する場面。

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⬆︎登壇する岩崎監督と作家の森 絵都さん

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⬆︎会場からの質問に答える「希望の牧場」の吉沢さん

終映後に、なんと当事者たちが登場、監督の岩崎雅典と森絵都の対談を興味深く聞かせてもらった。また対談後の聴衆との質疑には、客席から吉沢正巳が答えるのだが、驚くべき内容に、場内が静まり返ったり、拍手が湧き起こったり。

いくつか出た質問の中で、「牛のような家畜に、原発事故直後に安全な場所へ移動するような策がなぜ取られなかったか」というのがあり、これに対し、吉沢は「政府側で、その動きがあり、具体的な家畜移動プランまで策定されたのは事実。ただ、実行されることはなかった。理由は、”人間”の対応で手いっぱい、とても家畜以下の動物へは手が回らないので、放っておくとされた」と。

既に4年が経過したとは言え、放射線の影響が出始めるのは、実はこれからが本番。チェルノブイリでもこのような記録映画は残されておらず、生きとし生けるもののその後を克明に追う本企画は誠に秀逸で、貴重である。本来、国がこうした作業をすべきであるのに、民間が行っているという大いなる矛盾を感じざるを得ない。既に第4弾の準備中であると岩崎監督から案内があった。

上映されたのは、日比谷図書館地下のホール。シニア料金700円ということもあってか、ほぼ満員の場内は高齢者ばかり。やはりここでも女性が圧倒的であったし、質疑でも盛んに手を挙げていたのは女性ばかりというのは・・・。

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⬆︎⬇︎会場で吉沢さんが配布した資料。小さいので、大変重要なことが書かれているので、画面拡大してでも是非読んでほしい。

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