ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「アリスのままで」

150629 原題:STILL ALICE 米 101分 [脚・監]リチャード・グラツァー(本作クランクアップ直後、ALSにて没。享年63。彼の体調を考慮し、撮影はわずか23日間と短期間)

なんども予告編を見て、筋書きがあらかた分かってしまい、そっちの興味はさほどでなかったが、アカデミー主演女優賞を初め、主演女優賞総なめにしたジュリアン・ムーアの演技に興味津々で見に行った。

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多作の彼女の主要作品は結構見ていて、演技の上手さは十分承知だが、やはり本作では、なるほどという納得の演技。50の初めで若年性アルツハイマーを発症し、徐々に壊れていく姿を、家族や教職にあった彼女のアカデミックな環境の中で、ごく自然に表現していて、これは、なかなかその辺の女優には出来ないだろう。

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⬆︎発症後、初めてアルツハイマー学会で講演するアリス。もちろん講演内容を周到に準備し、1行ずつハイライトしていく手法で、まったく間違えることなく講演を終え、会場からスタンディング・オベーションを受ける。

効果的な対アルツハイマー認知症治療薬は、急速に開発されているから、大いに期待したいが、現在はなお誰にでも起きうる病だけに、見ていて本当に辛い。とりわけ、彼女のような社会的にも教育的にも高いレベルにある人間は、なおさら受け入れがたい現実だろう。「癌だったらよかったなのに」と夫につぶやくシーンが印象的である。

いよいよの時に備え、スマホに自らの映像と声で睡眠薬による自死をすすめる内容を録画し、実行に及ぼうとするも、服用寸前に家政婦が来て、未遂に。

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⬆︎舞台女優を目指す次女とは、生き方の違いからたびたび衝突、一時気まずい関係になるが、最後は次女がつきっきりで面倒を見ることに。ある詩を次女が読み終え、母親に「今のは何についてだと思う?」長いポーズがあって、「愛・・・よね」とアリス。これがラストシーン。

ところで、ジュリアン・ムーアだが、外見の劣化が止まらない。加齢もあるから仕方ないし、彼女の場合、余り整形などしていないから、むしろ自然でよいと思うべしなのだが、ついつい昔の作品と比べてしまう。男優なら加齢と共に別の魅力が加わることがよくあるのだが、女優はそうは行かないから、そこが辛いね。

#51 画像はALLCINEMA on lineから