ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ルック・オブ・サイレンス」

150710 原題もTHE LOOK OF SILENCE デンマークインドネシアノルウェーフィンランド、英の合作。103分。[監]ジョシュア・オッペンハイマー、[製作総指揮]ヴェルナー・ヘルツォークなど。

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前作になる衝撃の「アクト・オブ・キリング」を引き継いだ形だが、本作では、被害者の弟アディが、加害者を何人か訪ねあて、当時の様子を生々しく聞き取る手法が取られている。事件後に誕生しているアディは、母親から当時の様子や、実は自分の兄も被害者だったことを知らされる。

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⬆︎母親から当時のことをすこしずつ聞くアディ。

60年代に、実際にインドネシアに起きたおぞましい大虐殺事件を追うジョシュア・オッペンハイマーは、「アクト・オブ・キリング」でセンセーションを起こしたことに満足することなく、更に加害者を追い、真相に深く切り込んでいく。

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⬆︎当時の殺人の様子のスケッチを見せながら得意げに語る加害者たちとその家族。

オッペンハイマーがどのように加害者たちに協力要請をしたか分からないが、カメラが回っている前で、嬉々として殺人のシーンを語る犯人たちの姿には戦慄を覚えざるを得ない。ましてや、今回はインタビューアーが、自分たちが手を下した被害者の弟であることを考えると、もはやこれは常識の通じない世界だ。

アディに対する演技指導的なことを行ったかどうか不明だが、たまたま彼がメガネ技師であり、加害者に対し、メガネを作らせることを導入部にして、うまく真実を吐露させているようだが、加害者の中には、途中から重大な事実を喋っていることに気づき、急にアディへの態度を硬化させるようなシーンも含まれている。

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加害者たちが語ったこと、それらは、ちょっとここに書くのが辛いほどの内容で、これほど衝撃を受けたノンフィクション作品はない。

#54 画像はALLCINEMA on lineから