ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

オペラプロデュース公演「復活」@新国立中劇場

150712

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貴重な本邦初演オペラを見る機会があった。出演者のお一人にお願いしたら、これ以上望めない特等席!たっぷり堪能させてもらった。ただ、館内の気温、下げすぎで、これには参った。この辺りもう少し気配りできないのだろうか。

さて、「復活」、無論初めての鑑賞だが、音楽が最初の音を鳴らすと、「む、む、ヴェリズモ?」と感じる出だし。1875年の生まれで、レオンカヴァッロやマスカーニたちと同世代人だから、相互に意識していても不思議ではない。ただ、初演はカヴァレリアやパリアッチより少し後の1904年とある。

この作曲家、死没が1954年だから、つい最近まで生きていたことになる。例の「トゥーランドット」完成前に亡くなったプッチーニと親しかった因縁で、未完成部分を補って完成させたことで知られている。

4部構成だが、それぞれが30分ほどなので、うまく配分したものと思う。途中、一度25分の休憩を挟んで、丁度3時間と程よい長さだ。

文豪レフ・トルストイの小説のオペラ化で、ロシア貴族の館が舞台。若い貴族ディミトリに見初められ身ごもった下女カチューシャは、その後、捨てられ、娼婦に身を落とし、挙句に殺人事件に関与するなど、逆境に抗いながら生きる女。そしてシベリア送りに。

ひょんなきっかけで、それを知ったディミトリ、自分の軽はずみな行動を悔い、カチューシャに心から贖罪の気持ちを伝えるも、やがて二人は別々の道を歩みだすという幕切れ。

華やかな貴族の館と、暗いシベリアの大地が交互に現れるのは、回し舞台でうまく表現されていて、感心する。主役の二人、ソプラノスピントの柿岡敦子さんはお顔も名前も以前から存じ上げているが、舞台を観たのは初めて。歌唱も演技も極めて高いレベルで、運命に手荒く翻弄されるカチューシャを力強く表現していた。

相手役、ディミートリの古橋郷平さん、以前より格段に進化していて、実に頼もしい。180cmをはるかに超える長身のテノール、こちらも今後の活躍を大いに期待したい。

今回ご夫婦で出演された羽山弘子さんと羽山晃生さん、準主役だが、存在感は十分示されたと思う。弘子さん、相変わらずチャーミングな舞台姿が観衆を魅了、また晃生さんは、最近長年努めたテノールからバリトンへ転向されて初めてお聞きしたが、彼のアリアへの喝采が一番大きかったようだ。

カチューシャのアリアが結構多いのだが、独立して聴きたくなるような内容でないのがやや心残りではあるが、オペラとしては今後もしばしば上演されてしかるべき作品と思う。

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