150817 脚本家である荒井晴彦の2本目の監督作品。もちろん脚本も。ただ、今回は作品より、二階堂ふみの演技を見たくて雨の中、有楽町まで出かけた。
結論から言えば、十分に期待に応えてくれて、言うことなし。特に、本作で少し話題になった台詞回し。昭和20年という時代に合わせて、ややゆっくり目、しかも明らかに現代とは異なる抑揚で喋っている。そう、田中絹代や原節子、杉村春子などを彷彿とさせるような感じと言えば言い過ぎかな。
時代は昭和20年の初夏から終戦までの杉並区。母(工藤夕貴、二階堂とは実年齢で23歳違いだから、親子として特におかしくはないのだが、工藤にはちょっと気の毒な配役かも)と暮らす里子(二階堂)。女二人世帯で心細い日々。そんな中、隣家の銀行員、市毛(長谷川博巳)は、妻子を疎開させ、多忙で家を空けることが多いから、防空壕も勝手に使って欲しいと、何かと頼りになる存在。
⬆︎食料の買い出しで母と田舎へ。河原で水浴びした母から、すっかり女らしくなった娘に、それとなく市毛に気を許してはならないと注意される。さすが母親の勘は鋭い。
若い肢体を持て余す里子、ある晩、庭になった熟れたトマトを持って、隣家へ。真っ赤なトマトを三つ戸枠に並べ、すぐに食べろと市毛に迫る、このシーンが印象的だ。結局、この後、二人は結ばれるのだが、里子は何くわぬ顔をして、実はしたたかな計算をしている、結構怖い女なのだ。こういうのは二階堂が最も得意とする役どころだろう。
そして、終戦。当然、市毛の妻子は疎開先から戻ってくるだろう。それを承知の上で、里子が言う「ここからが私の戦い」というセリフに凄みが。
#66 画像はALLCINEMA on lineから