ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「この国の空」

150817 脚本家である荒井晴彦の2本目の監督作品。もちろん脚本も。ただ、今回は作品より、二階堂ふみの演技を見たくて雨の中、有楽町まで出かけた。

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結論から言えば、十分に期待に応えてくれて、言うことなし。特に、本作で少し話題になった台詞回し。昭和20年という時代に合わせて、ややゆっくり目、しかも明らかに現代とは異なる抑揚で喋っている。そう、田中絹代原節子杉村春子などを彷彿とさせるような感じと言えば言い過ぎかな。

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時代は昭和20年の初夏から終戦までの杉並区。母(工藤夕貴、二階堂とは実年齢で23歳違いだから、親子として特におかしくはないのだが、工藤にはちょっと気の毒な配役かも)と暮らす里子(二階堂)。女二人世帯で心細い日々。そんな中、隣家の銀行員、市毛(長谷川博巳)は、妻子を疎開させ、多忙で家を空けることが多いから、防空壕も勝手に使って欲しいと、何かと頼りになる存在。

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⬆︎食料の買い出しで母と田舎へ。河原で水浴びした母から、すっかり女らしくなった娘に、それとなく市毛に気を許してはならないと注意される。さすが母親の勘は鋭い。

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若い肢体を持て余す里子、ある晩、庭になった熟れたトマトを持って、隣家へ。真っ赤なトマトを三つ戸枠に並べ、すぐに食べろと市毛に迫る、このシーンが印象的だ。結局、この後、二人は結ばれるのだが、里子は何くわぬ顔をして、実はしたたかな計算をしている、結構怖い女なのだ。こういうのは二階堂が最も得意とする役どころだろう。

そして、終戦。当然、市毛の妻子は疎開先から戻ってくるだろう。それを承知の上で、里子が言う「ここからが私の戦い」というセリフに凄みが。

#66 画像はALLCINEMA on lineから