ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ふたつの名前を持つ少年」

150823 原題:RUN BOY RUN 108分 仏独合作だが、タイトルも含め、クレジットも英語併記で、国際映画祭出品を考慮してのことか。劇中の言語は、ポーランド語がメインで、他にドイツ語、ヘブライ語が時々。[監]ぺぺ・ダンカート(独、60)実話を基に製作。

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舞台は1942~45、ナチスドイツ制圧下から解放までのポーランド。ゲットーを脱出し、家族バラバラになりながら、不屈の意志でポーランド人になりすまし、必死の逃亡を続けた8歳児の逃亡記。こんないたいけな子が、過酷な環境で、時に見知らぬ地元住民の暖かさに触れながら、3年近くも逃亡を続け、最後は、ユダヤ人児童保護機関に助けられまでを、四季を通じて変化を見せるポーランドの自然を背景に描く。

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⬆︎この独り住まいの女性に、雪の中、戸口前で倒れていたユーレック(主人公)を助けられ、匿われるが、後にそのことで、独軍に徹底的に痛めつけられ、家屋は破壊される。

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⬆︎一度は独軍に捕まるも、隙を見て、再び逃亡へ。

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⬆︎ソ連軍に解放された村に戻ってきたユーレク、昔、何かと可愛がってくれた懐かしいおばさんと涙の再会を果たす。右腕は、逃亡中、匿われた村での農作業中の事故で失っている。

厳しいナチスユダヤ人狩りとは言え、9歳ぐらいの子供を、そこまで執拗に、しかも大々的に追い続けるのは、いささか合理性に欠けるような気もするが。いくらキリスト教徒になりすましても、ユダヤ人の場合、割礼という動かぬ証拠が存在するから、そこを突かれると、なりすましは破綻してしまう。

ゲットーでの別れ際に、父親から、徹底的にポーランドの子を演じろ、でもユダヤ人であることは絶対に忘れるなと言われたことを、常に肝に銘じて行動する、この子の姿には感動する。

男の子を演じたのは双子で、見ている側は全くそのことには気づかない。それぞれ得意分野があって、その特性を最大限生かして撮影したとは、自身双子の監督の弁。

村の事故で右腕を失うが、C.G.による撮影が素晴らしく、左手だけになったユーレクの動きなど、不思議なほど違和感なく撮れていた。凄い技術だ。

ラストシーンは、主人公の現在の姿。もう85ぐらいだろうか、イスラエルのどこかの浜辺で、サッカーに興じる若者たちを静かに見守る目には安らかな光が。

#69 画像はALLCINEMA on lineから。