ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ナイトクローラー」

150825 原題も:NIGHTCRAWLER 118分 米 2014 [脚・監]ダン・ギルロイ(「ボーン・レガシー」'12)

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この内容にはL.A.ほどふさわしい舞台はない。上の画像は、いかにも象徴的である。

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定職もなく、こそ泥などで過ごす、見るからに冴えない独身男、ルイス・ブルーム(ジェイク・ギレンホール)は、ある日、たまたま通り掛かった事件現場に群がる動画撮影パパラッチを目撃、これはいい商売になると直感する。見かけはさえないが動物的な勘が冴えわたる。

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見よう見まねで試行錯誤の末、凄いネタを仕入れることに成功。これをテレビ局へ売り込みにいくわけだが、この交渉術にこれまた並外れた才能を示す。局を仕切っている敏腕ディレクター、ニーナ(レネ・ルッソ)を、逆に手玉に取る、はったりと話術には驚嘆あるのみ。

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さらにインパクトのある映像を仕入れようとエスカレートしていくルイス、とうとう強盗殺人事件の現場に、警察より早く到着し、生々しい殺人現場と、犯人たちの逃亡シーンの撮影に成功する。TV局に売り込むだけに飽き足らず、警察まで手玉に取る、驚きの行動に。

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ただでさえどんぐりまなこのギレンホール、本作のために10kg弱の減量した(痩せこけた一匹狼に見せるたけ、ギレンホール自身のアイディアとか)から、目だけがギョロギョロと、ちょっと他の俳優では真似のできないド迫力の演技力を示す。これだけでも、ちょっとした見ものである。

対するルッソさん、ずいぶん久しぶりに見たが、今や61歳だが、その割にはなかなか妖艶な雰囲気を醸し出すのはご立派。それにしても、キャスリン・ターナー同様、この人もアマゾネスだな。

こういうエグさ、ド厚かましさ、生々しさ、etc.は日本人には絶対無理だし、アメリカの、それもやはりL.A.独特のもののような気がする。そういう気持ちにさせる力を持っている作品だ。

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”ショーバイ”繁盛で、アシスタント、リックを雇うが、これがまた大した働きもしないくせに、ルイスが荒稼ぎしそうだと分かると、急に給与アップを要求、ついでにボーナスまで寄越せと、ルイスのギョロ目に怯えながらも迫るところは、ある意味、凄い。撮影技術を学ぶより、ルイスの交渉術を学んじゃったみたい。

しかし、そんなことで折れるようなルイスじゃない。したたかな計算をして、交渉に応じるふりをして、最後は、カーチェイスの末、裏返しになった車で動かなくなった殺人犯への至近撮影をリックに命じ・・・。いやはや、息もつけない展開が目まぐるしく、アドレナリン、出っぱなし。

日本のテレビ局の視聴率競争も、相当なもんらしいが、多分そのはるか上を行くであろう、アメリカのテレビ局の実像のようなもの、舞台裏が見られるのも、実に興味が尽きない。

ポール・ハギスに一脈通じそうなダン・ギルロイの技に拍手喝采である。

#70 画像はALLCINEMA on lineから。