ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ヴィンセントが教えてくれたこと」

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⬆︎チラシでは、小さくて見えないが、製作総指揮、脚本、監督はセオドア・メルフィ。ほとんど監督実績のない人だが、本作、結構な出来栄え。原題は、St.Vincent、聖ヴィンセントという訳は、映画の終盤、一番泣ける部分で合点が行く仕掛け。102分

長く連れ添った愛妻を介護施設に預け、ひたすら自堕落な生活を送るヴィンセントが主人公。(ビル・マーレイのうまさが光る)家の中も、庭も荒れるに任せ、ポンコツ車はやっと走れるかどうかというシロモノ。それでも、以前から飼っているブサカワの猫の面倒を見たり、時折訪ねてくるロシア人売春婦との腐れ縁も継続中。外見も中身も、どうしようもないジイさんで、近所でも鼻摘まみ。

そんな中、お隣に引っ越してきた母子家庭と思しき二人。どうやら定番の、亭主に逃げられたナントカの深情け組。(この太っちょのおっかさんを演じるメリッサ・マッカーシーが、森三中村上知子そっくりで、笑える)そして、もう一人。小学校4年生ぐらいのオリバー。(これが準主役)身体も同級生の中では、ひ弱だし、それに無口で、一見していじめられっ子だ。

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この辺りまで来ると、だいたい先が読めてしまうのだが、このエロくそじじいと、ひ弱なオリバーが、いつの間にか育んでしまう”友情”が見どころ。金はないが、ヒマなヴィンセントは、オリバーを競馬場やバーに連れていくわ、自分の売春婦に会わせるわ、まあ、とんでもないことの連続。

しかし、オリバーのたくましいところは、そういう場面を通じて、いつも間にか見事な成長ぶりを見せていくことだ。ヴィンセントにもともとオリバーを鍛え上げようという心持ちがあったわけではない。たまたまである。まさに二人の化学反応というところだろう。

一方、学校では、見違えるような生徒になっていく過程を、暖かく見守る教師がいる。彼の指導で、生徒たちが自分にとっての聖人とは、というテーマで研究発表をするチャンスが。学内だけでなく、広く父兄たちを招いての堂々たるお披露目である。

他の生徒たちがマザー・テレサやら野球選手などを選ぶ中で、一人オリバーは名も知れぬどころか、つまはじき的存在のヴィンセントを選び、彼の人生を映像とともに見事に紹介、ヴィンセントと共に壇上で盛大な拍手喝采を浴びる。

この辺り、鼻の奥の粘膜が、結構ビミョーに。ただ、この子役、巧すぎてつまらないかも。もう少しとつとつとしいている方が却って共感を得られたような気がする。

それより、ロシア人の売春婦演じた⬇︎ナオミ・ワッツさん、また新境地を拓いたような気がする。全体に少しだけ体重を増やし、やたら田舎くさく、英語もすっごい鈍りのあるロシア人を好演。

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これもまた結構な見ものである。

#73 画像はALLCINEMA on lineから