ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声」

150928 原題:Boychoir (少年合唱団)米 103分 [監]フランソワ・ジラール(カナダ)

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ボーイ・ソプラノと聞くと、ウィーン少年合唱団をつい思い浮かべてしまうが、これはアメリカの話。American Boychoir Schoolという全寮制の学校は、ニュージャージーに本拠を置く、世界的にもかなりレベルの高い、本格的な少年合唱団である。

物語は、テキサス州の田舎町で、荒んだ生活を送る、ある母子家庭の少年ステットを描くところから始まる。たった一人の身内である母親まで亡くしてしまい、ますます心が荒んでいくのをどうすることもできない。

 ただ、彼が素晴らしい声の持ち主であることを、通っている学校の先生、ミス・スチール(あら懐かしや、デブラ・ウィンガー!)だけが見抜いていて、なんとか、彼の才能を開花させようとする。

そんな学校へ、ある日、全米少年合唱団が演奏に訪れる。実は、ミス・スチールが動いて、合唱団の指導者カーヴェル(ダスティン・ホフマン)のオーディションをステットに受けさせようとしたのだったが・・・。(無名の学校の一教師に、そんなことが可能?!)

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スッタモンダの末、ステットを認知しない富豪の父親が、金にものを言わせて、ステットを、この名門American Boychoir Schoolに入学させ、仲間の少年たちに意地悪をされたり、軋轢を繰り返した挙句、ついに晴れの舞台で、堂々のソロを披露し、父親も折れて、家族の一員として迎えられるまでのストーリー。

この主役のギャレット・ウェアリングという男の子だが、オーディションで選ばれたということだから、最後の場面で、実際に超難度のハイDを発声したのだろうか、いささか疑問が残るが、全体に素晴らしい歌唱を披露していた。しかも、ちょっと女性的ながら、なかなかの美少年ぶり。

この合唱団、実際に世界ツアーに年間なんども出かけるとかで、劇中でも日本公演の話も出てくるし、その為の練習なのか、日本語の歌(蛍がどうとかこうとか)も歌われていたし、団員たちが日本語らしき言葉を発するところも登場する。

それにしても、ボーイソプラノは声変わりするまでの、ほんの一瞬のこと。それを指導者側がうまくタイミングを合わせてあげないと、気づかないうちに声変わりしてしまい、その子の声の絶頂期をフイにしてしまうとは、考えようによっては、まことに過酷な話だ。

指導者の一人が言う「神が一瞬だけ授けてくれる贈り物なのだ」というセリフが印象に残る。

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⬆︎学校の校長に扮するキャシー・ベイツ、さすがに年取ったなぁ〜。本作での重々しい役柄にはぴったりだが。

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それと⬆︎、ダスティン・ホフマンだが、ピアノを演奏するシーンがあり、実際に彼自身が弾いているのがわかる。それも当然で、若い頃に実際にピアノを習っていて、挫折したらしい。その経験が、本作で巧みに生かされていたということ。

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そして、何より「愛と青春の旅立ち」や「愛と追憶の日々」で、実にチャーミングな演技を見せてくれた、あのデブラ・ウィンガーが久しぶりに銀幕に登場したのが何より嬉しい。既に還暦を迎えているが、まだまだ十分見られる。

そして、エンディングで歌われる、心にしみる歌声がこれ⬇︎

Josh GrobanのThe Mistery of Your Gift

#75 画像はALLCINEMA on lineから