ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「マンザナ、わが町」

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日米開戦後、アメリカの太平洋側在住の日系人だけを標的にして、理不尽にも、米政府は、デスバレー近くの荒野ににわか仕立てで用意したバラックに押し込んだ事件を扱った芝居。時は1942年、舞台は寒風吹きすさぶマンザナ(スペイン語でりんご園を指す言葉。因みにマドリッドを貫通する河も、複数形でManzanaresと言う。マンサナーレスと発音するが)の、言わば、強制収容所

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実話をベースにして、井上ひさしが戯曲化したもの。彼の想像力が遺憾なく発揮された作品と思う。元々は4人部屋仕様らしきところに、5人の女性が収容されていて、管理人から手渡された朗読劇「マンザナ、わが町」の台本を手に、稽古を始めているところから始まる。

生まれも育った環境もまるで違うこれら5人の女性たち、ジャーナリスト、浪曲師、舞台奇術師、歌手、映画女優が、収容所の一室で繰り広げる悲喜劇。仲間割れ、仲間だと思っていた一人が、実はそうでなかったり、それでも最後は再び仲間として連帯感で強く結ばれる彼女たち。

「マンザナ!マンザナ!マンザナ!

ここは日本人の血を引く

すべての人の、

そして人間の血を引く

すべての人の、

わたしたちのひろば。」

 

最後のところだけ、少々学芸会っぽくなっちゃっているのが残念と言えば残念。

なお、幕が下りてから、字幕で、1988年、時のレーガン大統領が、日系人の不当な強制収容に対し公式に謝罪し、一人2万ドルの補償金を出したが、ほとんどの被害者は既に亡くなっていたという説明が出る。

演じる5人が皆、ホントに素晴らしいのだ。中でも、浪曲を唸り、三味線を爪弾き、かなりきわどいセリフもさらりと言ってのける、オトメ天津役の熊谷真美が抜群の演技力を披露する。いい芝居を見せてもらった。

新宿東口紀伊國屋ホールってーのは、何十年ぶりかで行ったが、開業50年を過ぎているというから、さすがに老朽化が顕著。でもそれなりに風情のある劇場だ。ずいぶん狭いという印象だが、それでも360席もあるというから、貴重な存在だろう。