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ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「パリ3区の遺産相続人」

151204 原題:My Old Lady 米英仏合作 107分 原作・脚本・監督:イスラエルホロヴィッツ(名前からして、バリバリのユダヤ人、これまで脚本は多数手がけているが、監督としては、これが第1作)、製作者の一人、レイチェル・ホロヴィッツは彼の娘。

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生前の父親とは徹底して反目し、自分は一度も父親から愛されたことはないと決めつけて、ニューヨークで一人生きてきた52歳男マティアス(ケヴィン・クライン)には、妻子だけでなく、財産もほとんどない。ついには、その父親の遺産をあてにせざるを得なくなる。

その遺産というのがパリ3区(マレー地区のRue Francs Bougeois)にあるというので、なんとか尋ね当てたのは、なんとも古色蒼然たる館。でも、そこそこ広い庭もあり、工夫すれば、なかなか住み心地も良さそうではないか(と多分思ったろう)。声をかけながら、一部屋ずつ”探訪”していると、奥の一室に人の気配。

なんとマチルド(マギー・スミス)という老婆が住みついているではないか。あんた、誰?と訝しく思いつつ、不慣れな仏語で話しかけると、流暢な英語で返される。やがて、少しずつ、いろいろ謎が解かれていくのだが・・・。仰天の展開と結末が

日本には馴染みのないフランス独特のヴィアジェ(Viager)という不動産売買システムが本作のキーワードの一つになっている。これは相続人のいない独居老人が、生存する限り、そこに住み続ける権利を保有しつつ所有権を売り渡す方式で、早い話が、とっと死んで仕舞えば、買主は破格の値段で不動産を取得できるが、逆だと頭金(Bouquetという)と月々一定の家賃を延々と売主の老人に払い続けることになり、下手をすると先に買い手が先に死んだりすれば、買主にとっては悲劇というしかない。

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つまり、本作で、マティアスの亡くなった父親が残した遺産というのが、マチルドが住むアパートというわけ。マチルドは現在90歳(マギー・スミスはまもなく81)だが、健康そのもの。さあ、どうする。この後、同じアパートに住むマチルドの娘、クロエ(クリスティン・スコット・トーマス)が登場、スッタモンダの騒ぎが。

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二人のアカデミー賞受賞俳優と一人のアカデミー賞候補者という、芸達者の3人が織りなす喜劇だから、面白くないはずがない。随所にピリッとしたユーモアが散りばめられていて、クスクス笑わせながら、最後は少しほろっと苦味のエッセンスも。クリスティン・スコット・トーマスはイギリス人だが、フランスが長く、旦那もフランス人だから、英仏語ともに完璧な母国語。ケヴィンは米人(劇中では、片言の仏語だが、実際は流暢とか)、スミスは英人というわけで、パリが舞台だが、脇役でしかフランス人は登場しない。

エンドロールが終わってから、更に話は続く。エンドロール出始めると、そそくさと席を立つ人がいるが、やはり映画は場内の灯りが点くまで、出てはダメだ。

この映画、ほとんど室内でのやり取りが続き、このまま舞台劇にもできると思った。

蛇足だが、この邦題は、無理がなく、結構行ける。

#91 画像はALLCINEMA on lineから