ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ドリームホーム 99%を操る男たち」

160201 原題:99 HOMES 112分 米 原案・脚本・監督:ラミン・バーラニ(米国生まれだが、顔と名前から中東系と推察)

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米国の抱える極端なまでの格差社会を、ある平凡な家庭が崩壊していく過程を丹念に描くことで、見事に浮き彫りにしてみせる。それにしても、日本の家賃滞納、立ち退き代執行と異なり、有無を言わせぬ、実に荒っぽい立ち退かせ方にはびっくりだ。全編、かなりの緊張感を持って見続けた。

 

アンドリュー・ガーフィールド演じるデニス・ナッシュは、母(ローラ・ダーンブルース・ダーンの娘。間もなく50だが、意外に若い!)と一人息子の3人で倹しく生活しているが、不況でろくな仕事が得られず、家賃滞納が続き、ついに立ち退き命令が。

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当日、群の保安官を引き連れて現れた相手の悪徳不動産ブローカー、リック・カーヴァー(マイケル・シャノン)はまったく容赦しない。押し問答の末、結局、必要最低限のものを持ち出して、近所のモーテルへ移らざるを得なくなる。

 

しかし、生まれた時から住んでいる家への愛着が強いデニス、なんと自分を追い立てた当の張本人である男リックの元で働くことを選ぶ。

 

やがて、それなりに才覚を認められ、リックの右腕になったデニスは、逆に罪のない善良な人々を追い立てる側に回り、次第に上へとのし上がり、年俸も一気に上がり、ちょっとしたセレブ気取りだ。⬇︎

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だた、元々ナイーブなデニスは、所詮冷酷な追い立て魔にはなれない。せっかく手に入れた豪邸に母と息子を連れて行っても、却って怪しまれ、こんな家には住みたくないと、とっととデニスの息子を連れて実家のタンパへ移ってしまう。

 

ある裁判で、偽造証書を自分が裁判所に届けたことがきっかけで、善良な市民が追い立てられるさまは見ていられない。結局、デニスは、社長であるリックを裏切り、からくりを暴露。これから、母と息子を取り戻す旅に出ないと。追い詰められた男の、やっと得た心の平穏。デニスの安らいだ顔が印象的だ。

 

ところで、本作のタイトルだが、劇中、リック・カーヴァーのこんなセリフに集約されている気がする。曰く、 Only one in a hundred's gonna get on that ark, son. Every other pour soul's gonna drown. America doesn't bail out losers. 「箱舟にたどり着けるのは、100人のうち、たった一人。あとの99人は溺れ死ぬのさ。アメリカってのは敗者は救わない国だ。」

 

米国生まれながら、幼少時に英国に移住しているし、雰囲気も英国風だから、英国人だとばかり思っていたアンドリュー・ガーフィールド、これまでどちらかと言うと、ちょっと心が屈折したような、ウブな役を演じることが多い。本作では、別な一面を見た思い。好演。リックを演じたマイケル・シャノンは怪演かな。

 

#7 画像はALLCINEMA on lineから