ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「シーズンズ 2万年の地球旅行」

160211 原題:LES SAISONS 監督・脚本・製作:ジャック・ペラン、監督・脚本はジャック・クリュゾーも。

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大自然を扱ったドキュメンタリー作品と言えば、子供の頃に見て感動したディズニーの「砂漠は生きている」以来、「緑の魔境」やら「沈黙の世界」、最近では、「アース」、「WATARIDORI」、「ネイチャー」、「オーシャンズ」、「ライフ- いのちをつなぐ物語」など、我ながらよく見ている。本作は、そんな中でも極め付けの一本だろう。

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本作はまったくのドキュメンタリーではない。副題にもなっているように、2万年の歴史を辿るというのもテーマの一つ。人間と動物との出会いから共存などを紹介するシーンもあり、一瞬だが、人類も登場する。この辺りでわずかにCGが使われるものの、ほとんどは、実写である。どうしたらこんな凄い映像が撮影できるのか、メーキングをみたい衝動に駆られる。

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一例を挙げると、このオオヤマネコだ。あまり狩りがお上手ではない。恐ろしい冬が迫る中で、なんとか獲物をと焦るが、今日もまた空転の1日。ある日、やっと小動物を見つけるが、捕獲寸前で巣の中に逃げ込まれる。巣の中に必死で腕を突っ込むが、奥までは届かない。その時、カメラは巣の中からオオヤマネコの空回りする太い腕を捉えるのだが、大きな機材をどのようにしたら、巣の中に仕込めるのか。

また、地面すれすれのところで、追いつ追われつのチェイスを展開する小動物をカメラが移動しながら追うのだが、木々が鬱蒼と茂った場所で、どうしたら、動線を確保できるか、考えれば考えるほど訳が分からなくなる。ま、一事が万事、この調子。

本作の魅力は、なんといっても映像の美しさとドローンなどを駆使したカメラワークの素晴らしさだろう。WATARIDORIでも驚異の撮影を敢行して、世界を驚かせたジャック・ペランの会心作に違いない。子供の目を意識したのだろう、残酷な場面もすべて寸止め。

ジャック・ペランは、「ニュー・シネマ・パラダイス」で、世界中で広く知られるようになったが、同世代人の愚亭としては、イタリア映画の名作「鞄を持った女」や「家族日誌」での初々しい姿の方が印象に残る。

のちに仏映画「ロシュフォールの恋人たち」で、カトリーヌ・ドヌーヴフラソワーズ・ドルレアック姉妹と共演し、歌に踊りにと存分に器用さを発揮し、一段と知名度を上げる。いかにも育ちの良さを感じさせる美青年だった。

#11 画像はALLCINEMA on lineから