160308
フェルメールは何度も日本に来ているが、はて、この作品は来日経験があるのか。メトロポリタン美術館所蔵であるから、1985年頃、そこでは見ているはず。36,7点しか残っていない作品群の中でも、特に優れた作品に入る一点だろう。
今回は、5時頃に入館したのだが、ここは毎日午後8時まで開けている美術館なので、閉館間際というわけではなく、多少の混雑は覚悟していたが、拍子抜けするほどのガラガラで、フェルメールを独り占めして鑑賞するという超贅沢さを味わった。じっと一人きりで佇むこと5分、心ゆくまでフェルメールの凄さを堪能。手前の、当時流行っていたであろう厚手のテーブルクロスのたっぷりとした質感、それを映す金属の皿、その上の水差しにも周辺の色が映り込んでいる。白い頭巾を通してうっすらと見える頭髪、左手の、当時やはり主流だったスタイルの窓に青空と雲が映って見える。画面上のあらゆる事象が何かを語りかけてくるような、そんな作風。これぞフェルメール!の逸品だろう。
フェルメールとほぼ同時代人のピーテル・デ・ホーホの「女性と召使いのいる中庭」。フェルメールの「小路」に色調や雰囲気がそっくり。
今回のもう一つの目玉が、このレンブラントの傑作のひとつ「ベローナ」(Bellona)。ベローナとは、ローマ神話に出てくる戦争の女神。軍神マルスの妻。装着している鎧の見事さはどうだろう。それと、同じ鉄でも明らかに別の種類と思われる盾とを巧みに描き分けている。ちなみに顔は、まだ新婚のサスキアに似せて描かれたと言う。
ウィレム・カルフ 貝類と盃のある静物 細密画の代表格。
ま、フェルメールとレンブラントのこの作品だけでも見に来る価値はたっぷり以上。他にはオランダ派が得意とする海洋画、静物画(これでもかというほど細かいタッチの作品)、肖像画(達人フランス・ハルスの作品が2点)、教会や跳ね橋を描いた風景画(先駆者ヤーコブ・ファン・ライスダールなど)、そして、フェルメール、デ・ホーホ、ヤン・ステーンに代表される風俗画など全部で60点。
これも代表的な風俗画の一つ。ヤン・ステーンの「恋の病」左手前の小道具の描き方など、冴えている。
間違いなくきわめて上質な展覧会。