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ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「偉大なるマルグリット」

映画

160317 原題:MARGUERITTE 仏、129分 監督・脚本:グザビエ・ジャノリ

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1920年、パリ郊外の豪邸。デュモン男爵夫人、マルグリット(カトリーヌ・フロ)が、自宅で開いたチャリティー音楽会で前座の後、にぎにぎしく登場。コロラトゥーラの中でも最難関とされる「魔笛」から「夜の女王のアリア」の伴奏が鳴り始める。

そして第一声、その場に居合わせる全員が凍りつくほどの調子っぱずれ。戸惑いながらも、お互い顔を見合わせ、歌い終わった彼女に、一応喝采を送り、歌っているご本人もそんな雰囲気はどこ吹く風。

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デュモン男爵、ジョルジュは、裏では愛人を囲っており、しばしば家を空けている。マルグリットは夫がいない寂しさから逃れるためにも、一層大好きな歌の世界にのめりこもうとする。そんな姿は彼女のサロンに集う客たちにも伝わり、彼女の歌の技術には目をつむり、褒めそやしたりもする。

そんな天真爛漫なマルグリットに、ジョルジュは、ある日、専属のヴォイストレーナー、伴奏ピアニスト、その他管理スタッフを用意し、発声から鍛え直す作戦を敢行する。

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ついに迎えた大劇場での本番、「ノルマ」から「カスタ・ディーヴァ」を歌い始めると、やがて館内爆笑の渦に。会場にいる男爵自身もいたたまれない気分に。しかし、ここで奇跡が!数分経過したところで、まるで本物のプリマが乗り移ったかのごとく堂々たる高音を響かせ始め、これまでの必死の特訓を知っているチームの誰もが「やったぁ!!」色めき立つ。

ところがである、急に咳き込んだ男爵夫人、やがて舞台に突っ伏し、吐血までしてしまう。今は、病床に伏しているマルグリットだが、ジョルジュとオペラへの愛は消えることはない。

本人は自分が音痴であることに気づいているのか、気づいてないのか、あるいは気づいないふりをしているのか、それは見る側に判断が委ねられているような展開と幕切れ。

こんな途方もない話、当然フィクションと思っていたら、なんとフロレンス・フォスター・ジェンキンスという実在のアメリカ人がモデルというからびっくりだ。(追記:下のコメント欄に記載があるように、幼少時から音楽通の姉から「あんたが知らなかったとはびっくり」と。さっそくYouTubeを見ると、確かに幾つか音源がありました。しかも、彼女をテーマにした、ズバリ「Florence Foster Jenkins』という映画が、メリル・ストリープ主演で間もなくクランクアップらしいことも判明。ぜひ見たいところだが、日本公開があるかどうか。)

主人公を演じるカトリーヌ・フロ(「地上5cmの恋心」、「大統領の料理人」)のうまさが光る。あの歌声はご本人のものかどうか。あれだけ外して歌うというのは、やはり相当難しいんだろうな。

時にはピアノ伴奏までする黒人の執事が、日頃から男爵夫人に寄り添い、全てを知り尽くしているような存在として登場する。彼だけが知っている謎がありそうだ。

音痴って、自分では気付かないというから、やはり自分ではまともに歌っているつもりなんだろう。そうなると、笑われるというのは、普通の感覚からすると相当辛いと思うんだが。では、なんのために彼女は歌い続けようとしたのだろうか。

ちょっと長すぎではあるが、飽きずに見られる佳作。撮影はすべて、チェコで行われた。

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#20 画像はIMdb, 及びALLCINEMA on lineから