ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「カラヴァッジョ展」@東京西洋美術館

160329 気温もだいぶ上がった上野へ。

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やはり、相当ごった返している。時間は5時半過ぎだから、これから宴会組がどっと繰り出すはず。桜は6分咲きぐらい。

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今日は、花見でなく、国立西洋美術館へ、待望のカラヴァッジョを見に来た。閉館、1時間半前に入館だから、ゆったり見られた。一言で、これは凄い展覧会!!

1573-1610とわずか36歳という短命だった天才画家,しかも性格がやや粗暴、短気で事件ばかり起こし、後半はイタリア全土を逃げ回った人生!それだけに、 Michelangelo Merisi da Caravaggioの作品は、フェルメールほどでないにしても、多くはない。それも教会の壁画にも結構な作品を残しているから、わざわざ遠くマルタ島まで行かないと実物で見られないような作品も少なくない中で、東京で、11も彼の作品が見られ、その中には世界初公開「マグダラの聖女の法悦」⬇︎まで含まれるのだから、これはもう僥倖と言うしかない。東京に暮らしていてつくづくありがたいと思う。

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得意の口半開き状態のマグダラの聖女。あまりに官能的な絵柄。

全部で50点ほどの展示物だが、例によって同時代人(ジュゼペ・デ・リベーラなどいわゆるカラヴァジェスキが中心)の作品ももちろんそれなりの数が来ているが、当館の学芸員が厳選したらしく、本当にいい作品ばかりで、嬉しくなる。

Michelangeroという名前は、特に珍しくはないが、やはりあんな巨匠 (Michelangelo Buonaroti 1475-1564) がいたので、イタリア人の親も、そう簡単には我が子に命名しなかったろう。でも、カラヴァッジョの場合は、敢えてそう名付けられたような気がする。世間は、一応ご本家に対する遠慮もあったかどうか、彼はミケランジェロと呼ばれることはなく、出身地Caravaggioで呼ばれるように。(不思議なことに、ダ・ヴィンチの場合は、da(~から)を付けるが、彼の場合は、Da Caravaggioではない。どうも、こう考えてくると、まことに一貫性に欠ける話だ。

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4時過ぎに内部に入ったら、いきなりこの絵だ!1597年頃の作品「女占い師」、ローマのカピトリーノ美術館蔵。構図といい、色調、色の対比といいゼッピン!Zingara che predice la venturaというタイトルだが、このジプシー占い師、それほどズル賢そうには見えない。

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ECCE HOMO(エッケ・ホモ)「この男を見よ」。(1605年頃、Genova, Musei di Strada Nuova - Palazzo Bianco) 世紀の競作と言われて、当時のマッシミ枢機卿がカラヴァッジョ他3人の画家に同じタイトルで競わせたとか。今回、この絵のすぐそばに展示してあるが、Cigoli(チゴリ)が描いた同名の作品に軍配が上がったらしい。かの枢機卿に見る目がなかったか。

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「エマオの晩餐」復活したイエスの奇跡を起こす有名な場面だ。1606年頃、ローマで殺人を犯して逃亡中に、所持金が乏しくなって描いた作品らしい。Museo Brera, Milano

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ラカヴァジェスキの一人、ロレーヌ地方出身のジョルジュ・ラ・トゥールの「煙草を吸う男」。彼が実際にカラヴァッジョの作品を見たかどうか、不明。

本展の章立ては:

I. 風俗画:占い、酒場、音楽

II.  風俗画:五感

III. 静物

IV. 肖像

V.  光

VI.斬首

VII.聖母と聖人 新たな図像

斬首などというタイトルの章は、実に珍しい。ご存知、ホロフェルネスやゴリアテが斬首された生々しい場面を描いた作品が5,6点も。

上のカラヴァッジョ展と書かれた図の左側は「果物籠を持つ少年」(ローマ、ボルゲーゼ美術館)と「バッカス」(フィレンツェ、ウッフィーツィ画廊)。果物籠の少年は、口を半開きにして、どこか物憂げである。果物が主役で、少年はわずかにぼかして描かれていて、立体感を出している。一方のバッカスも、顔は女性的で、どこか官能的。カラヴァッジョにそっちの気配があったのかも知れないと思わせる。

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これはタツィオ・ダ・ヴァラッロ作、長崎での26殉教者の磔刑図。長崎らしい風景も、日本人らしい姿も見られないが、この時代にこうした遠い異国での事件を取り上げた作品は大変珍しいだろう。

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他に史料として、ローマの国立古文書館から数点の展示が。カラヴァッジョがあちこちで起こしたトラブルを証明するような古文書がまことに興味深い。当時の筆跡って、なぜか別の人物が書いているのに、皆よく似た特徴を持っている。今の筆跡と、あまりにも異なるので、残念ながら読めなかったが、江戸東京博物館ダヴィンチ展と違って、こちらは全て本物だから凄いのだ。

ほとんど時間がなかったが、駆け足で常設館も巡ってきた。

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絶対に見落とせないのが、この作品。Carlo Dolciの「悲しみの聖母」当時、高価だったラピスラズリを贅沢に使った逸品。品のいい横顔はどうだろう。

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時折、こうした新規購入作品をチェックするのも楽しみ。

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一見してロココ調の、この女流画家の作品も素晴らしい!

ついでに、真贋論争継続中のこの作品も。⬇︎もしかして本物だったら、大変なことだ。

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