ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ジョルジョ・モランディ 終わりなき変奏」展@東京ステーション・ギャラリー

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いよいよ会期も残り少なくなったので、勤務の後、東京駅途中下車で、見てきた。20世紀で、最も重要な画家の一人とされるジョルジョ・モランディだが、日本ではそれほど知られていない。それは作品が、かなり偏ったものから来るのだろう。

今回展示の作品も、そのほとんどが静物で、しかも対象物は瓶とか壺とか、日常の品々を並び替えては、繰り返し描いている、どちらかといえば風変わりと言っていいような画風である。色調も、グレー、ベージュ、黄土色のみ。エッチングも多様なハッチング(斜めに細い線を重ねる手法)を駆使した小品が多い。

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1890-1964の74年間のほとんどを生地のボローニャ(Via Fondanza, Bologna)で過ごした。ヴェネツィアやローマには、重要な展覧会があると、何度か出かけてはいるが、イタリアから国外に出たのは、なんと66歳の時で、しかもボローニャからも遠くないスイスというから、ほぼ引き篭もりのようなもの。

母と3人の妹と暮らし、独身を通したようだから、かなり変わり種と言われても仕方ない。しかも190cm以上の長身というから、イタリア人にしては突出した上背ということになる。

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そんな男がひたすら同じような静物ばかり描いていたわけだ。若い頃に、形而上絵画を得意としたジョルジョ・デ・キリコに触発されて、似たような作品を試作していたようだが、むしろ彼に大きな影響を与えたのは、セザンヌだろう。究極の絵画論、円柱、円錐、球形に収斂するという理論に深く共鳴したらしい。

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そういえば、今回展示されている6点ほどの風景画にも、その実践らしい形跡が見られる。

章立ては、

I.  変奏のはじまり

II. 溝に差す影

III.  ひしめく器 ー 都市のように

IV.  逆さのじょうご

V.   矩形のコンポジション

VI. 多様なハッチング

VII.ペルシャの扁壺(ヘンコ)

VIII.縞模様の効果

IX.  終わりなき変奏

X.  風景の量感

XI. ふるえる花弁