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ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「木靴の樹」

160413 原題:L'ALBERO DEGLI ZOCCOLI(邦題はこの直訳。本来は樹でなく一本の木だから、木とすべきところをあえて樹に)1978年、イタリア 187分 出演こそしていないが、脚本、監督、撮影、すべてエルマンノ・オルミ一人でやっている。この後、「ジョヴァンニ」(2001)、「ポー川のひかり」(2006), 「ランジェ侯爵夫人」(2007)など。

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ベルガモ近郊の寒村が舞台。土地、家、家畜、農機具のほぼすべてを地主から借りて細々と生計を立てる農民たちが主人公。4世帯がひっそりと長屋暮らし。これはほとんどドキュメンタリーと言って良い作品である。スタンダードサイズの画面に、色あせた映像が淡々と映る。

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ある日、神父の勧めで、末っ子のミネク(変わった名前だ)を6kmも離れた町の学校にやることにしたバティスティだったが、まさかこのことで一家が悲劇に見舞われることになろうとは。

履いていた木靴が割れてしまい、ミネクが裸足でぬかるみを歩いて帰ってきたことに心を痛めた父親は、夜陰に紛れて一本の若木を切り倒し、朝までにミネクのために木靴を作ってやるのだった。自分では、倒した木を巧妙に隠したつもりだったが・・・。

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⬆︎結局地主に発覚し、荷物をまとめて一家は夜逃げすることに。黙々とわずかな家財道具を馬車に積むバティスティ、一緒に住む他の家族も気の毒と思うものの、どうすることもできない。

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⬆︎その朝結婚したテレジーナ、夫と運河を下って、初めてミラノへやってくる。叔母がやっている修道院へと向かう。新婚夫婦のために2台のシングルベッドを美しい花飾りの紐で結びつけるなど、修道尼たちの暖かい心配りが身にしみるのだった。

それにしても生々しいシーンが幾つか。ガチョウの首を鉈でスパッと切落としたり、豚を5,6人がかりで屠るシーンは、我々には正視に堪えないのだが、子供たちにはしっかり見せて、自分たちの生き様を学ばせている場面は、むしろ感動的。

こうした家族単位の話を交互に織り交ぜながら、3時間あまり。派手な見せ場はないものの、心にしっとり残る名作。ちなみに出演者は全員地元の素人で、演技経験なし。

#28 画像はALLCINEMA on lineから。1978年版とは言え、カラーの色合いが、どうにも。物語の設定が20世紀初頭ということだから、あえてこのような抑えた彩度を使ったのだろう。