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ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「スポットライト 世紀のスクープ」

映画

160418 原題:SPOTLIGHT 米 128分 脚本・監督:トム・マッカーシー(彼の映画人生はほとんどが出演者としてだが、最近は監督業が主流に。「扉を叩く人」(2007)以来、本作が4作目だから、大したものだ)製作及び製作総指揮に名を連ねる人物が13人というのも異常な多さだ。撮影はマサノブ・タカヤナギ高柳雅暢)という日本人。「ブラック・スキャンダル」、「世界に一つのプレイブック」など話題作も手がけている。

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1970年代から80年代にかけて、ほぼ世界中のローマカトリック教会に蔓延していたおぞましいスキャンダルを、粘り強い取材を重ね、ついに大々的に報じたボストン・グローブ紙の特集記事チーム「スポットライト」スタッフの驚くべき執念を描いた作品。

アカデミー作品賞を受賞した、実に骨太の社会派ドラマ。途中、くじけそうになりながらも、ひたすら地道に事件の核心に迫ろうとする気迫とジャーナリスト魂が全編に漂い、1秒たりとも眠気を催すことなし。

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新任の編集局長(リーヴ・シュレイバー、⬆︎左から二人目、この人、素晴らしい声をしている!)が、世間でも社内でも長くタブー視されてきたこの問題に取り組もうと言い出した当初は、微妙に意見がずれているスタッフ同士、しかも問題が問題だけに、スクープに持ち込めるか疑問視する者もいないわけではなかったが、手分けして問題の洗い出しと教会、教会側弁護士、被害者などにインタビューを重ねるうちに彼らの中に”確信”と連帯感が醸成されている。その過程の描き方が緻密で、無駄がなくお見事の一言。

なるほどアメリカ流のやり方とは、こういうものかとうならせる場面少なからず。日本と異なり、おもねりやへつらいなどの余計な感情は一切排除して、上下関係がストレートで、誰もが言いたいことを直言できるところが素晴らしい。そしてついにその日を迎えた彼らの達成感が、じわりとこちらにも伝わってくる。

それにしても、教徒の精神的拠り所であるはずの教会の中で、かくも長きにわたって、こうした恥ずべき行為が行われていたとは、呆れるばかりである。紅一点、サーシャ(レイチェル・マクアダムス)が取材した元神父が、「いたずらしたことは認めるけど、そこに何の喜びもなかった。」と繰り返し、そこがポイントとも。さらに自分自身がレイプされていたことも認め、サーシャを混乱させる。いやはや、凄まじき世界だ。

ところで、この作品、作品賞を取ったが、他には脚本賞だけで、作品賞がオスカー二つというのは、何と1952年の「地上最大のショー」以来の珍事らしい。俳優たちの演技、どれも素晴らしかったんだけどね。たまたま他の作品の俳優たちの方が上だったということだろう。

本作は、ボストン・グローブ社、及び、本作に登場する実在の記者たちから全面的な協力を得られたとか。「スポットライト」班のセットを彼らに見てもらうと、あまりのそっくりさに驚いた後、そそくさと本の並べ方とか、デスク上の文房具など手直ししたと伝えられている。

また主役のマイケル・キートンは演じる記者ロビーことウォルター・ロビンソンについて、事前に徹底的に調べ上げていて、二人が会った時に、喋り方や癖まで含めて自分のことを知り尽くしていることにロビーは心底驚いたらしい。我々にはあまり良くわからないが、ボストン訛りというのは相当クセが強いようだ。

#29 画像はALLCINEMA on lineから