ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「君がくれたグッドライフ」

160524 原題:HIN UND WEG ドイツ映画、95分 監督:クリスチャン・ジューベルト

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ドイツのある地方都市(撮影はヴィスバーデン)に住む仲良しサイクリスト・グループ。毎年、目的地を変えて、サイクリングを楽しんでいる。今回は、ハンネスとキキ夫妻の提案でベルギーへ行くことに。イタリアとかクロアチアが候補に上っていただけに、な〜んにもないベルギーと聞いて、みんながっかり。

あえてベルギーを目的地に選んだのには、もちろんわけがあった。ALS筋萎縮性側索硬化症)に冒され、余命わずかなハンネスは、悩んだ末、安楽死を選択する。それはベルギーでしか許されていないのが現状だからだ。

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出発早々に、そのことを皆に告げ、今まで黙っていたことを詫びるハンネス。翌日、仲間を置いて、妻のキキと二人で出かけようとすると、仲間が全員、出発の用意して待っていてくれた。

最終地、ベルギーオステンドで、予定どおり安楽死を遂げるハンネス。短くとも充実した人生だったとキキに感謝して目を閉じる。割にシンプルな展開だが、その間の本人や妻はもとより、母親、兄弟、そして仲間たちの動揺や諦めなど、複雑な感情が行き来するさまを、沿道の美しい風景とともに情感豊かに撮影され、深く心に残る作品に仕上がっている。

数年前のフランス映画祭出品作品、「母の身終い」(老いた母が、一人息子を遺して、スイスで安楽死する話)に共通する部分、少なからず。

仲間たちは出発前のミーティングで、互いに”課題”を出し合うのを恒例としている。キキに与えられた今回の課題はバンジージャンプ。ハンネスが安楽死を遂げて1年後、一面紅葉で染まった山々を背景に、眼下の青々とした渓流をめがけてダイブするキキの姿が映されて、ジ・エンド。

#42 画像はALLCINEMA on lineから。