ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ストリート・オーケストラ」

160824 原題:TUDO QUE APRENDEMOS JUNTOS 監督:セルジオ・マシャード

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これも実話ベースの作品。極度のあがり症のため、実力はあるのに、肝心のところで、それを発揮できない。それでも生きていくために、弦楽仲間が紹介してくれたある高校の音楽教師をやることに。どうせ交響楽団の正メンバーになるための”つなぎ”だからと割り切るものの、引き受けたのはとんでもない生徒たちばかりで、弦楽合奏とは名ばかり、到底自分の手に負えないと尻込みをする。しかし・・・・ビミョーな化学反応で、箸にも棒にもかからない合奏団が奇跡の音色を手に入れるまでの、苦悩するヴィオリニストを丁寧なタッチで描いていく。この監督はブラジル映画の傑作のひとつ「セントラル・ステーション」の助監督を務めたそうだ。

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リオ五輪ですっかり知られるようになったファベーラ地区。ただ、こちらの話はリオでなく、サンパウロ。ファベーラによく似た貧民街での話。自分自身もそこで育ったラエルチは、サンパウロ管弦楽団のオーディションが近づくにつれ、イライラが募り、つい弦楽仲間に当り散らして、心ならずも仲間割れしてしまう。

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そして迎えたオーディション、果たせるかな、コチコチになったラエルチ、まったく弓が弾けないまま終了。弦楽仲間とはあれ以来、疎遠に。仕方なく不良校でオケを指導することに。自分を受け入れない生徒とは半ば罵り合いの日々。でも、徐々に心が通い始めると、メキメキ上達し始め、ついには奇跡の音色を鳴らすのだった。

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音楽が奇跡を起こした似たような話はこれまでもいくらでもあったような気がするが、ブラジルの貧民街が舞台というところに、この作品のユニークさがある。

当初は、”オバマ”などと罵倒されながら奮闘する主人公のクソ真面目さが、最後は生徒たちの意地を上回り、気づいてみたらあがり症もいつの間にか消えて、無事オーディションにも合格、第2ヴァイリンだが、首席の地位を掴み取る。

#63 画像はIMdb,及びALLCINEMA on lineから