ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「リトル・ボーイ」

160830 原題もLittle Boy 墨・米合作 106分 製作・脚本・監督:アレハンドロ・モンテヴェルデ(メキシコ人、39歳、長編は2作目というから驚く)

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時間調整で見ることにした作品だが、なかなかの佳作で、得した気分だ。リトル・ボーイと聞いて、真っ先に連想したのは、アメリカが広島に落とした原爆の通称だ。その事はやはり本作で、重要な意味を持つ。

カリフォルニアの小さな漁村(O'hareという名前だが、架空)で自動車修理工場を営む一家。次男のペッパーは成長が止まってしまい、遊び仲間からはチビッ子と散々いじめられる。自分をいつも”相棒”と呼んで可愛がってくれるパパだけが唯一の味方であり、永遠のヒーローでもある。

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⬆︎いじめの先頭に立つのは、母親(エミリー・ワトソン)に横恋慕する医者、フォックスの息子フレディー。”ボク”にとってのジャイアンだ。

時代は太平洋戦争開戦が決定的となる1941年。扁平足で不採用となった長男に代わり、そのパパが出征することになったから、ペッパーの悲しみ方は尋常ではない。

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仲間外れにされたペッパーは、暇を持て余してよく近所の教会へ行って、オリバー司祭(トム・ウィルキンソン)に悩みを聞いてもらい、それだったら善い行いを実行しなさいと、善行リストを渡される。そのうちの一つに困っている人を助けなさいとある。

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敵国人と見なされた日系人はほとんどが過酷なマンサナ収容所に収容されたのだが、なぜか町外れで独り住まいをするハシモトという日系人がいる。彼を哀れんで、何かと声をかけるオリバー司祭とはトランプ仲間でもある。パパが戦うにっくき日本人なのだが、ハシモトに狙いを定めたペッパーは、いろんな手を使って、徐々に彼と親しくなるが・・・。

ちょっとこの辺り、若干リアリティーに乏しいと思うのだが、ま、それは置いておいて、ペッパーに念力で願いが叶うと信じ込ませてしまった怪しげなマジシャンのベン・イーグルなる芸人も登場する。まあ、みんなが格好を真似るウルトラセブンみたいな存在かな。

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こうなったら、念力でパパを呼び戻そうと、ある日ベン・イーグルの格好を真似て、彼方にそびえる山に向かって気を送ると、なんと突如地面が揺れ出し、見物していた大人たちも半信半疑の態。(広島に原爆が落とされる3ヶ月前に実際にカリフォルニアで地震が発生している)

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ついで、パパがいると言われた夕日の沈む方へ気を送ると、広島に原爆が落ちて終戦。大喜びの町の衆。(見ていて、この場面はビミョーだ)そのあとも、いろいろあって、結局、パパは負傷しながらもなんとか生還を果たすという、父と子の絆を描いたハートウォーミングなヒューマンドラマという仕立てなんだが、考えさせられること、少なからずで、後味、必ずしも良くない。

主演の子供は素人だが、見事な演技だ。エミリー・ワトソン(49)、トム・ウィルキンソン(66)は、共にイングランド出身。何度もハリウッド映画に出ていて、二人とも米語はかなり上手くなっている。

#66 画像はIMdb、およびALLCINEMA on lineから。