ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」@国立新美術館

160905

f:id:grappatei:20160906111536p:plain

ここでついこの間までオルセーとオランジュリーから来ていたルノワールは、今回見損なったが、ヴェネツィア派はしっかり見てきた。そもそもヴェニスに行ったのは2度しかないし、多分初回にアッカデミーア美術館は覗いているはずなのだが、何十年も前のことで、まった記憶にない。今回、ヴェネツィア派、1450年〜1620年頃の45点もの作品が集結しているが、一部テンペラ画が含まれるが、あとはすべて油彩で、しかもかなりの大物も含まれているから、本展の価値はすこぶる高いと言うべし。

f:id:grappatei:20160906112718p:plain

入館するとまず目に飛び込む位置に掲げられているのがジョヴァンニ・ベッリーニ聖母子 または赤い智天使の聖母」77cm x 60cmの板に油で描いた作品。幼子イエスの抱き方に特徴がある。頭上に浮かぶ智天使(ケルビム)たちがゆでだこ風なのが愉快。

f:id:grappatei:20160906113152p:plain

128 X 137cm 油彩/カンヴァス 「聖母マリアのエリーザベト訪問

ヴィットーレ・カルパッチョ(料理の名前の方が有名になっちゃったけど)の作品。やはり彼独特の赤が用いられている。背景の建物、植物、動物、人の衣装など、中東風。

f:id:grappatei:20160906113526p:plain

ティツィアーノ・ヴェチェッリオの「受胎告知」何しろ410 X 240cmという巨大な作品。よく運んできたものと思う。リアルト橋近くにあるサン・サルバドール(イタリア語ならサン・サルヴァトーレなのだが、なぜかスペイン語)大聖堂、右の身廊にかかっているものを今回の展覧会のために輸送した。同大聖堂にはレプリカが掛けられているという。これを楽しみにはるばるヴェニスまで見に行った人には申し訳ないね。

何と言ってもこれが本展の目玉。やはりティツィアーノは断然、他を圧倒している、抜きん出た存在。筆致がかなり粗く、確かにどこか後世の印象派のそれを思わせる。相当速く描いたと思われる。色合いも、あえて中間色を多用しており、背景のぼやかせ方にも工夫の跡が見られる。

この作品がどれだけ凄いかに敬意を表するためか、この1点のためだけにホールと巨大な額というかフレーム(同じか?)を用意して、国立新美術館側の意気込みが強く感じられる。

こういうのを見ちゃうと、彼の後に続く3人、ティントレット、ヴェロネーゼ、バッサーノは、どうしても小さく見えてしまう。

f:id:grappatei:20160906114743p:plain

これまたいかにもティツィアーノらしい上品な作品。「聖母子 またはあるベルティーニの聖母」124X 96cm  カンヴァス/油彩

f:id:grappatei:20160906115125p:plain

パオロ・ヴェロネーゼの「レパントの海戦の寓意」169 X 137cm 油彩/カンヴァス まことに珍しい絵柄だ。下は一見してそれとわかる海戦の様子。1571年、ギリシャレパントオスマントルコvs.教皇ヴェネツィア・スペイン連合軍が激突、結局連合軍が勝利する、歴史上、極めて有名な海戦。モンタージュ手法というのか、パオロ・ウッチェッロが得意とした技を駆使している。そして上方には、勝利側ゆかりの聖人たちが描かれている。

f:id:grappatei:20160906115613p:plain

ヤコポ・バッサーノは本名をヤコポ・ダル・ポンテというが、出身地であるバッサーノ・デル・グラッパ(そう、あのグラッパ酒の産地)からバッサーノと呼ばれている。この人、ご覧のように動物画を得意とした変わった人物。作品は「ノアの箱船に入っていく動物たち」あらゆる種類の動物をつがいで、右後方にある巨大な箱船に誘導しているノアは中央やや下に背中が大きく描かれている。

f:id:grappatei:20160906120101p:plain

ヤコポ・ティントレット(本名はロブスティ)の聖母被昇天。240 x 136cmとかなり大ぶり。ただ、この画像のみ、なぜか実際とは色調がかなり異なる。カトリックの教義では、キリストが昇天して6年後に聖母が天に召されたことになっている。因みにその日、8月15日はカトリック国ではアサンプション、あるいはアッスンツィオーネと呼ばれる大祭。かなりはっきりした衣紋の色といい、構図といいマリアが中央にどーんと配置され、強いインパクトを見る者に与えている。

入館したのが5時前で、当然館内はガラガラ。やはり美術品などは、こうした環境でゆったりと鑑賞したいねぇ。

画像は、国立新美術館のホームページから。