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ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ」

映画

161019 原題:GENIUS (この邦題、感心しない。そもそも覚えにくいし・・・かと言って原題のままでも具合悪いし、やはりタイトルの付け方は実に悩ましい。モロに興行成績に関係してくるだけに。)104分、英国映画

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監督のマイケル・グランデージは舞台人で、映画のメガホン取るのは初めてとか。それにしては上手い!出演陣、英国から二人、豪州一人、米国一人と多彩。

コリン・ファース演じる主人公、編集者マックス(マックスウェル)・パーキンズはもとより、ジュード・ロー演じるトム(トーマス)・ウルフのこともろくに知らないで、作品を見た。

保守的な出版社に勤める編集者がコツコツと新人を発掘し、育て上げるという、かなり地味なストーリーを脚本の冴えで見事な映画に仕上げている。普段滅多なことでは光が当たることのない地味〜なエディターを主人公に仕立てところが愉快だ。

あちこち出版社を回ってまったく相手にされず、どうせここもダメだろうと持ち込んだ先にいたのがパーキンズだったのは、まさしく運命としか言いようがない。分厚い原稿を読み終えて、多少の手直しで売れることを確信する。

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その策が見事奏功、二人で編集作業に没頭し、こうして処女作"LOOK HOMEWARD, ANGEL"(天使よ故郷を見よ)はベストセラーに。思わぬ成功で、パーキンズに絶大な信頼を置くようになるウルフ、二人の仲は、ウルフの18歳年上の女房アリーンが羨むほど親密に。彼女が呟く "I don't exist any more. I've been edited"(私って、もうこの世に存在しないの。削除されちゃったのよ)というセリフが切ない。

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売れ始めれば、ウルフのパーキンズに対する姿勢・態度に微妙な変化が生じるのは、当然の帰結。その軋みに気づくウルフだったが・・・37歳の死はあまりにあっけない。

後のビートジェネレーション(ジャック・ケルアックなど)にも大きな影響を与えたウルフ、彼を世の中に押し出したパーキンズ、それを支えた妻たち(ニコル・キッドマン、ローラ・リニー)以外に、「華麗なるギャッツビー」のスコット・フィッツジェラルドガイ・ピアース)、アーネスト・ヘミングウェイドミニク・ウェスト)などが登場する。あの時代の空気感のようなものが、画面に巧みに表現されている。

劇中、ウルフが黒人のジャズバーへパーキンズを誘う。まったくジャズに興味を示さないパーキンズ、嫌がらせで、敢えてジャズと関係のなさそうな「アフトンの流れ」(Flow Gently Sweet Afton)をリクエストする。それをリーダーのトランペッターにウルフが告げると、心得たもので、この場違いなメロディーをゆっくりとソロ演奏。にんまりするパーキンズ。ところが、ワンフレーズを終えたところで、このメロディーをガラッとジャズ演奏に変えて賑やかに演奏し始めると、負けたと言う表情のパーキンズ。このシーンはなかなか面白かった。スコットランドの有名な詩人ロバート・バーンズの詩をアメリカ人作曲家が曲にしたもので、どこかスコットランドの香りが漂う名曲。と言うことは、パーキンズの先祖はスコットランド出身だったのかも。

そう言えば、彼のしゃべる発音はいつものコリン・ファースのもので、英国式だが、同じ英国人のジュード・ローには、かなり訛りのきつい米語を喋らせている。

パーキンズと最後が濁るのは、なぜだろう。Perkinsと綴り、アンソニー・パーキンスと同じ綴りなのに、だ。人の名前だから、うっかりしたことは言えないが、本来はパーキンスと濁らないと思うのだが。

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上の画像のようにパーキンズはずーっと帽子をかぶり続けていて、一体いつ脱ぐんだろうと思っていたら、ウルフが亡くなった時に初めて脱ぎ、涙を拭うシーンが印象的だ。

#77 画像はIMdbから。