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ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「灼熱」

161129 原題:ZVIZDAN (クロアチア語ゆえに意味不明だが、英語タイトルがTHE HIGH SUNというから、同じ意味だろう)脚本・監督:ダリボル・マタニッチ

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バルカン半島の民族紛争を描いた作品は、これまでもいつくもと作られている。本作もその一つ。恋人同士が敵味方になってしまうという話自体も珍しいことではなく、中東ではイスラエル人とアラブ人という組み合わせになり、多分、地球上、他の地区でも似たようなことは起きている筈。

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見るからにのどかで牧歌的な大地で、じゃれ合う恋人たち。そんな状況とは裏腹に自分たちの町は、激しい紛争の真っただ中。一人がクロアチア人、もう一人がセルビア人という、たったそれだけの理由で、男は一瞬で射殺され、女が残される。

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ブラバン演奏中というのに、楽器を持ったまま恋人を追いかけ続け、ついに彼女に家までたどり着くものの、居合わせた若い兵士に撃たれてしまう。男を制しようとしているのは、女の兄。1991年のこと。

10年後の、2001年、さらに20年後の2011年と、若い男女の悲話が綴られる。恋人になるのは3話とも同じ俳優だから、ちょっと混乱する。女が、戸口に座ってひたすら詫びる男に、ドアを開けたまま室内に去っていくところで、ジ・エンド。僅かな救いが感じられ、後味はそれほどひどくない。

日本人の目にはまったく違いの分からないバルカン人同士、大きな違いは宗教だけ。クロアチア人のほとんどがローマ・カトリックなのに対して、セルビア人はほとんどが正教会信者。それだけのことがこれほどの憎悪を呼び起こすのが不思議でしようがない。

かつては、チトーという男がボスニア・ヘルツェゴビナセルビアスロベニアクロアチアマケドニアモンテネグロを一つの国にまとめあげたのだが、彼の没後、さっそく醜い民族闘争に明け暮れ、あっという間に四分五裂のありさま。

この感覚はちょっとよそ者には測り難い。

#88 画像はIMdb、及びALLCINEMA on lineから。