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ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ミス・シェパードをお手本に」

161212 ほぼ実話らしい。戯曲化され、主演の二人は舞台でも同じ役で共演したそうだ。監督のニコラス・ハイトナー、ほとんどマイナーな作品ばかりで、日本では知名度が低い。

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BBCのドラマ「ダウントンアビー」で口の悪い伯爵夫人を演じて、毎回取っ替え引っ替え素晴らしいコスチュームを身にまとっているマギー・スミスが、本作では見るだけで臭気が漂ってきそうなボロをまとっていて、その落差が面白い。目の動かし方や、細かい表情の巧みさは、やはり天下一品!

相手役のレックス・ジェニングスも、いかにも英国人らしい俳優で、スミスとの見事な掛け合いが、じつに軽妙で、楽しい。

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⬆︎本作の舞台は、上の標識にあるように、ロンドンの中心部からやや北にあるカムデン地区のグロースター・クレセント。(クレセントとは、半円形に湾曲した道路を指す)

冒頭は、激しい交通事故の音声のみ。うまい伏線の張り方だ。追われるミス・シェパードの運転するヴァン、追う警察車両。

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それから何年か後、オンボロのヴァンで生活するボロをまとったミス・シェパード。路上生活を見かねた文筆業にアラン(ジェニングス)が庭先にヴァンを駐車させてやる。ほんのいっ時のつもりが何と15年!

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近隣の住人たちも穏やかな人々ばかりで、何かと優しい言葉をミス・シェパードにかけるのだが、つっけんどんな対応しかしない偏屈ぶり。

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時にはこんな茶目っ気も。

実は、ミス・シェパード、若かりし頃、天下のアルフレッド・コルトーに手ほどきを受けたほど、将来を見込まれたピアニストだったというから驚きである。

終盤、それを思わせるシーンが挿入される。ショパンのピアノ協奏曲1番の2楽章の冒頭部分を、節くれだったシワシワの手で鍵盤をそっと叩きながら、ゆっくりと弾き始める。マギー・スミス本人が弾いているようにしか見えないが、何か特殊技術を使ったか。

(20'40''辺りがその旋律が流れる。)

まるで聖母被昇天のごとく、ミス・シェパードが天に召されていくエンディングは笑える。いかにも英国人がつくった英国らしい作品である。

#94 画像はIMdb、およびALLCINEMA on lineとYouTubeから。