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ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「沈黙 - サイレンス」

170131 原題:SILENCE  米・伊・墨合作 162分はかなり長い!(原作が日本で、舞台も日本、出演者も多くの日本人が登場するが、日本はキャスト以外、ほぼ関与していないという、やや珍しい作品)原作:遠藤周作、名匠、イタリア系アメリカ人のMartin Scorseseが30年近く温めていたそうだ。やはり、興味はあっても、キリシタンが潜む村にポルトガル人宣教師が乗り込んでくるという、西欧人にはおよそ特殊な世界だけに、映画化実現にそれだけ時間がかかるのも無理はないだろう。尤も、1971年に篠田正浩が監督した作品がある。脚本は原作者の遠藤周作自身も加わっている。が、あまり話題にはならなかったようだ。

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心の内面をかなり仔細に紙面を割いている原作だけに、映像化には苦労して当然だろう。したがって、原作とはかなり異なった趣になっているのはやむを得ないと思う。原作の素晴らしい出来は出来として、映画としても十分素晴らしいと思う。

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日本に布教に行ったものの棄教したと伝えられるフェレイラ神父(リーアム・ニーソン)の存在をどうしても確認せざるを得ない、弟子のロドリーゴアンドリュー・ガーフィールド)とガルペ(アダム・ドライバー)が、自称キリシタンのキチジロー(窪塚洋介)の手引きで、隠れ切支丹の潜む長崎近くの村にたどり着くところから物語は始まる。

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ほぼ全容を把握している長崎奉行井上筑後守(イッセー尾形)の硬軟使い分ける、巧みで狡猾極まる懐柔策に次第に追い詰められていく切支丹たち、一方正視に耐えぬ凄惨な拷問を見せつけられるパードレたちも、今自分たちが何をなすべきか、内なる神に必死で問うが、沈黙したまま。

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今は日本人になりきってしまった師、フェレイラにやっと会えたというのに・・・・ロドリーゴも結局は、フェレイラの辿った道を辿ることに。

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ポルトガル人という設定だが、ポルトガル語は一言も出てこない。ハリウッド製だから、ま、仕方ないだろうが、いつものように、リアリティーにかけることは否めない。祈りは全てラテン語である。

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⬆︎加瀬亮もチョイ役。(この後、見せしめに、首を切り落とされてしまう)他に青木崇高もほんの一瞬。変わったところでは、元プロレスラーの高山善廣も出てくる。

全編台湾で撮影したそうだ。それも72日間というから、事前の調査・準備がどれほどのものだったか、先日NHKで放映されたスコセッシ監督の談話にもそれがよく伺える。

物語のメインは、やはり所期の目的を貫かんとするロドリーゴと、何度も踏み絵を踏み、棄教したと見せかけてはロドリーゴに告解を求め、挙げ句の果てに、ユダよろしく銀300枚で幕府側にロドリーゴを売り渡してしまうキチジローのやりとりだろう。その意味でこの二人が主役と言えるかも知れない。

それにしても、隠れキリシタンとは、まことに不思議な存在であり、果たしてこの作品、海外でどのような評価を受けるか興味が尽きない。

フェレイラ役、当初はダニエル・デイ=ルイスが演じる予定だったのが、彼が「リンカーン」に決まり、逆に当初リンカーンを予定していたリーアム・ニーソンがフェレイラに回ったとか。完全に入れ替わってしまったというわけだ。

他に、ベニシオ・デル・トーロ、ガエル・ガルシア・ベナマルが予定されていた宣教師も、アンドリュー・ガーフィールドとアダム・ドライバーに変更され、企画を暖める期間が長いだけにこんなことが起きているのだろう。アダム・ドライバーは本作出演が決まると20キロ以上体重を落としたらしい。

ところで、「沈黙 - サイレンス」という邦題だが、1971年の篠田作品が「沈黙 SILENCE」で、意識的にこうしてあるようだ。日本語の沈黙と英語のサイレンスはイコールではない。沈黙は、ここでは神についてのことであり、サイレンスにはもう少し広い意味での自然の静寂というような感じがする。

撮影中、スコセッシ監督は終始ピリピリしていて、少しでも物音を立てようものなら怒鳴りまくっていたらしい。映画では、音楽らしい音楽は流れいない。地元の当時の歌だけ。エンドロールも虫の音から、波の音へと変化するが、ほぼサイレント映画のごとし。

#6 画像はIMdbから。