ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

シャセリオー展「山田五郎スペシャルトークショー」@国立西洋美術館

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気になりながら、まだ見に行く機会がなかった「シャセリオー展」、このほどタイムリーにも展覧会のPR会社からブロガー対象のトークショーの案内が。今回は即応募したので、招待されることになった。

山田五郎は、普段からラジオ番組やテレビのコメンテーター、美術番組で頻繁に聞く(見る)機会の多い人物。博覧強記の権化のような人物で、本職はなんだかよく分からない。一応、美術評論家が本職で、検索すると、肩書きにはタレント、コラムニスト、元講談社編集長となっている。

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まずは、新古典主義ロマン主義の対比を、図を投影して当時の時代背景などを描写しながら、克明に解説。実に分かりやすいし、随所に彼一流の表現を織り混ぜるので、場内、笑いがあちこちから漏れる。ご本人は笑わしているつもりはないようだが、何気ない表現がいちいち可笑しいのだ。隣席の若い女性は、体を揺すってほぼ笑いっぱなし。

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内容の一部を紹介すると・・・・、

ロマン主義については、ロマンという言葉の持つ意味から説き起こす。ラテン語の変遷と、その後に現れるロマンス語。吟遊詩人。ロマンス語の語感、響。ラテン語vs.ロマンス語は文語vs.口語のような対比。前者が政治・経済を語るとすれば、後者は俗世を語る。

絵画のスポンサーの交代。二つの革命がもたらした変化。フランス革命に代表される市民革命と、産業革命。写真技術の出現で、画家にとって死活問題に。

少し戻して、前者は、ドミニク・アングルが代表する神話・歴史の世界のみを題材に選んだのに対して、ウージェーヌ・ドラクロワに代表される後者は、より現実の世界を題材にする。アカデミズムに対して、ジャーナリズム、エキソチシズム。後者を「19世紀の全共闘」とは、いかにも氏らしい表現で笑ってしまう。

アングルに見出されたシャセリオーは、順調に頭角を表すが、途中から新古典主義と袂を別つ。むしろドラクロワに近ずく。そして、モローに彼の理想が引き継がれ、マネーを経て、印象派という流れ。

他にも興味深い話、満載だったが、わずか1時間なので、もっともっと聞きたいという余韻を聴衆に残し、大喝采の中、会場を後にした。

その後、金曜日は午後8時まで開いているので、今知らされたばかりの内容を念頭に、改めて再入場し、主要作品のみ、じっくりと確認しながら鑑賞を楽しめた。

ちなみに展示作品は103点に及ぶが、シャセリオーの油彩画に限れば、50点強。他に彼と関係の深かったドミニク・アングル、ウジェーヌ・ドラクロワ、ピュヴィ・ドゥ・シャヴァンヌ、ギュスターブ・モローオディロン・ルドン、アーギュスト・ルノワールなども展示されており、これだけ集中的にシャセリオーとその関連作品が一堂に見られることは、フランス本国でもまずないというから、どれだけ本展が必見の展覧会であることかが窺える。

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左は入口付近にある自画像。彼は出身がカリビアンであり、どこかにクレオールの血が流れていることを生涯、気にしていたという。自画像にも多少その雰囲気が感じられる。

右側はポーランド生れながら、ウクライナコサックの伝説的英雄イヴァン・マゼッパ(最後は裸のまま、馬にくくりつけられて追放された)を描いた一枚。これにインスパイアされた文豪(ヴィクトル・ユゴーなど)や作曲家(フランツ・リストなど)も少なくない。

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左は代表作の一点。気品溢れる作品で、悪いけど、アングルの俗っぽさより断然光る。右はギュスタブ・モローに大きな影響を与えた作品。

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この作品にはアカデミズムの影響が色濃く感じられる。

館内の写真は3枚とも、展覧会主催者から提供された公式写真です。また画像は、国立西洋美術館公式ホームページからお借りしたものです。

展覧会の概要は:

シャセリオー展 「19世紀フランス・ロマン主義の異才」
会期:2017年2月28日(火)から5月28日(日)
会場:国立西洋美術館