ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「アルフォンス・ムハ<スラブ叙事詩>」を見に、国立新美術館へ

170526 いやはや世の中には途轍もない絵があるもんだ。この画家、現在チェコのブルの近くの片田舎、イヴァンチツェ出身で、19世紀末、パリで、時の大女優サラ・ベルナールの知己を得たことで、いわゆるグラフィックアートの世界で傑出する画家となる。

しかし、彼の本領は、そんなもんではない。50歳から延々18年もかけて描き上げた「スラブ叙事詩」、縦横6mX8m、1000号とかの馬鹿でかい作品を実に20枚も世に出した。

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見るからに鄙びた駅舎だ。

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これがモラフスキー・クロムロフ城

しかも、これらが見られるのは、首都プラハではない。ブルノ近くのモラフスキー・クロムロフという村にある同名の城でしか鑑賞できないというシロモノ!その全てが現在に東京に来ているというから凄い!

たまたま昔の船友の一人で、画家のT氏が所属する団体の展覧会が同じフロアで開催中であり、ついでと言っては失礼な話だが、せっかくの機会なので、まずはムハを見ることにして、10時過ぎに会場に到着。折からの雨だし、混雑も大したことはないと踏んでいたのだが、とんでもない間違いで、切符売場には30分以上待ちと出ている。ここまで来たんだから、仕方ない、そのまま雨中、並ぶことに。

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内部に入ってからも、延々と列は続き、実際には、実際に絵を見るまで1時間近くかかったことになる。

まあしかし、それだけの甲斐のある展覧会であるのは、間違いない。内部では、見上げるような絵の群に圧倒され、テレビ番組でも紹介されていたので、大体は想像していたのだが、まさかこれほどとは、というのが正直な感想。

三番目の部屋だけ、撮影自由という粋な計らいで、自分も何枚か撮影したのがこれ。

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高校生らしい男女の姿が目立った。こういう世界を実際に見させる学校もあるのだ。

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スラブ民族の興亡や悲哀がテーマで、テレビ番組で紹介されていたのは、こうした一人一人に実際に、彼の周辺に村人のモデルがいたらしいこと。

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全体に霞がかかったような哀愁を帯びた淡い色調も素晴らしい。

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彼は、パリで名を挙げた故に、フランス風にミュシャと呼ばれることになり、日本でもそう紹介されているが、原語では、ムハと発音されるから、今回の展示では、説明文にこのようにムハ(ミュシャ)としたのは、まことに正しい判断だ。

これらの作品の他にも、例のポスター画の展示もあり、本当に素晴らしい展覧会である。ショップも大盛況で、レジに並ぶ人の列は、見たこともないような長さになっていた。

会期は六月五日までだから、行ってない人は急いだ方がいい。日本では、もう2度と見ることはないだろうから。