ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

大エルミタージュ美術館展 - オールドマスター 西洋絵画の巨匠たち@森アーツセンター・ギャラリー

170530 何年か前、6時間もエルミタージュで過ごしたこともあり、行く予定がなかったのだが、またも姉がfacebookでお勧めというので、暇に任せて行ってきた。

エルミタージュ美術館展と称する展覧会は、もう何度かやっていて、記憶では、毎回、これぞという作品は数点程度、あとはその他もろもろという印象だったが、今度のは確かに、結構な数の重要作品が揃っていると感じた。

先日、テレビ番組でも紹介されていたが、その際、出演していた美術評論家の千足伸行氏も、この展覧会の構成等に関与したらしい。今回、画家の出身国別の展示にしたのも、同氏のアイディアらしい。

構成は、

1. イタリア:ルネサンスからバロック

2. オランダ:市民絵画の黄金時代

3. フランドル:バロック的豊穣の時代

4. スペイン:神と聖人の世紀

5. フランス:古典主義的バロックからロココ

6. ドイツ・イギリス:美術大国の狭間で

と、なかなか練られたタイトルが付けられている。こうして見ると確かに美術的には大国に挟まれて、ドイツとイギリスはいかにも脆弱な印象だ。

詳細は公式ホームページに譲るとして、今回、とりわけ印象深かったのは、以下の作品群。(ホームページから)

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入ったところにあるこのエカチェリーナ2世(ウィギリウス・エリクセン)のみ撮影できる。何人、いや何十人の愛人と過ごした隠れ家(Hermitage)を美術館にしたドイツ女。夫のピヨートル3世をクーデターで追い落とし、自らが実権を握るという野心満々の女で、その雰囲気がよく出ている。

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後世のルーベンスやヴェラスケスにも大きな影響を与えたヴェネツィア派の代表格、ティツィアーノの描く女性の肌の描き方は特別だ。このモデルの女性、例の「ウルビーノのヴィーナス」のモデルとどうやら同一人物らしい。

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カルロ・ドルチの「聖チェチリア」。弾いているのは小型卓上オルガン。言わずと知れた音楽家の守護聖人。カルロ・ドルチの「悲しみの聖母」は、現在国立西洋美術館の常設でかかっているが、愚亭の好きな作品。企画展に行っても、必ず立ち寄る一枚。

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ヴェドゥータ(広々した都市景観図)の先駆けは、17世紀のフランドルやネーデルランドの画家であるが、18世紀になると、カナレットが盛んにヴェネツィアを題材に数多くの作品を残している。これはそんな一枚。ヴェネツィア西岸フォンダメンタ・ノーヴェからの景観。本展では、他に、ベルナルド・ベッロットの描くドレスデンの「ツヴィンガー宮殿」⬇︎も代表的ヴェドゥータ作品。

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一見して早業師、ハルスの作品と分かる、当時の町の有力者。金融でのし上がった人物だろう。

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ペルシャの宰相、ハマン。ユダヤ人を一掃しようとという企みがバレて、逆に王から死を言い渡された。

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同じくデルフトに生まれ、フェルメールと同時代人で、フェルメールより少しだけ年長だったようだが、描く絵はよく似ている。金色のバケツには魚が見える。買い物に行った女中が主人にこれでいいか確認している様子。主人は編み物をしているようだ。

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スケートを楽しんでいるが、穴が空いていたり、それなりに危険もある氷上のスケート。手前には鳥用の罠が仕掛けられている。一見のどかな風景だが、危険が同居していることを示そうとしたか。

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ルーベンスにしては、小ぶりな作品。工房とついているが、ルーベンスが厳しく管理していたのであって、弟子任せの作品ではない。

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初代ピーテル・ブリューゲル次男やん・ブリューゲルの娘婿がこのダーフィット・テニールス2世。やたら登場人物が多く、何を伝えようとしているのか、判然としない。真ん中の青い服の男に周囲の視線と、左上からの光線が当たっている。

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これは可愛らしい作品だ。マリアの少女時代の作品は、そう多くはないと思われる。

刺繍をしていることがマリアの少女時代のキー。

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子供を描くことが好きだったムリーリョらしい作品。丸々とした幼子が実に可愛らしい。

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ロココの先駆け、ヴァトーはFête galante(雅宴画)と呼ばれるこうした作品で名を馳せた。

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身体は男性の方に反応しているが、心は右端の奥にいる家族の方へ向いている。マルグリット・ジェラールは、フラゴナールの義理の妹で弟子。この絵では、コスチュームを担当しているとか。小さな作品だが、生き生きとして、細かい筆さばきが感じられる。

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「狭間」のドイツの部屋では、ダントツの光芒を放つ作品。クラーナハ自体はあまり好きな画家ではないが、この絵は素晴らしい。