170713 原題:LA PAZZA GIOIA (大喜び)伊仏合作 監督:パオロ・ヴィルツィ
主演のヴァレーリア・ブルーニ・テデスキの上手さが断然光る作品!相手役の、監督の女房でもあるミカエラ・ラマッツォッティも見事な演技だった。テデスキさんは、例の元仏大統領夫人、カルラ・ブルーニの異父姉。まったく似ていない。もちろん妹の方が断然きれいだ。
この手の作品はイタリアでは、珍しいだろう。1991年に公開された米映画、「テルマ&ルイーズ」(スーザン・サランドン、ジーナ・デイビス)を彷彿とさせる典型的なロードムーヴィーである。
トスカーナにある療養施設、社会復帰を目指す弱者達が収容されている。ここで出会った、性格も育ちも何もかもまったく異なるベアトリーチェ(テデスキ)とドナテッラ(ラマッツォッティ)。
ベアトリーチェは、元伯爵夫人と言いふらし、虚言癖で口がよく回り、一見社交的な女、一方のドナテッラは、身体中にタトゥーを入れており、虚ろな表情でほとんど口を開かず、何を考えているか分からない、見るからに陰気な女。
見事なほど対照的な二人が互いに惹かれあったり、嫌悪したりしながらトスカーナ州内を転々と移動しつつ、互いの辛い過去を知るにつれ、ますます離れがたい仲に。
結局は、元の施設に二人とも戻ることになり、一応ハッピー・エンディングにしてあるが、周囲を巻き込み、大迷惑をかけながらも、計り知れない犠牲を二人とも払ったことにある種、諦観だけでなく、ちょっとだけ明るい未来を感じさせる幕切れ。後から施設に戻ったドナテッラに、2階の窓から控え目に手を振るベアトリーチェの、どこか物悲しい目が問わず語りに。
エンディングに字幕で紹介されたのは、1978年、イタリアでは精神病院を廃止したと。
世界で初めて精神病院をなくした国、イタリアでは、バザリア法の制定によって、次々に精神病院が閉鎖された。『自由こそ治療だ!』という画期的な考え方から、それまで病院に閉じ込められ、人としての扱いを受けていなかった患者たちを、一般社会で生活させるため、地域にもどしたのだ。本作は、そんな時代背景を基に作られた。
#47 (画像はIMDbから)