170721
10人が残った本選を聞きに東京文化会館小ホールへ。
愚亭が存じ上げている歌手は数名。ほとんどの方は初めて聞かせていただく。それぞれ3曲ずつ、概ね15分ほどで、10名、途中20分の休憩が入るから、2時開演で、終わったのが5時ちょっと前。そして審査中に、ミニコンサートが組まれていて、今回は17歳のヴァイオリニスト、森山まひるがシベリウスのヴァイオリン協奏曲ニ短調。あまりこれまで聞いたことのない作品。30分を超える曲で、しかもかなりのテクニックを要する難曲だと思った。のびのびと弾きまくって、大喝采。17歳にしては、やや幼さの残る、可愛らしい姿。比較は無意味なれど、あの15歳の棋士、藤井聡太くんがどれだけ大人びていたかということだろう。話が逸れた。
さて、コンクールだが、前半最後の二人のテノールは、どちらもよく知っていて、応援していたが、果たして大賞を取れるのだろうか。特に小笠原一規は選曲ミスでは?と思われるほど、低い曲を最初に持ってきて、彼の輝かしい高音を封印しているかのような印象。
澤崎一了(かずあき)は、馬力のある高音を次々に繰り出し、これでもかというほどの歌いっぷりで、場内からのブラーヴォが凄かった。ただ、やや一本調子の観は免れない。
後半、2番目に登場した別府美紗子、のっけから華やいだ雰囲気で歌い上げ、審査員の印象もきっと悪くないはずと期待したが。
9番目に登場した工藤和真、登場するなり、オーラのようなものを感じて、こりゃやりそうだという予感。なんとなくホセ・クーラを彷彿とさせるような雰囲気がある。果たせるかな、まあうまい!!こんな新人、今までどこで何をしていたんだろう。この時点で、彼の入賞は間違いないと踏んだ。強弱のつけかたや、間の取り方、バランス、ヴォイスコントロール、完璧なまでに見事だ!さらに、彼の自然な振りは、日本人ではないかの印象を与えた。とにかく声に凄まじい深みを感じたし、そこに嫌味もなければ、わざとらしさも何にもなし。
最後に登場した糸数 知(ちか)もうまかった。ひょっとして、工藤と争うのかと思わせたほどだったのだが、所詮は素人の耳、審査員は違った評価をしたようだ。
ということで、結果は、
第1位 テノール 工藤和真
第2位 テノール 澤﨑一了
第3位 ソプラノ 内田千陽
歌曲賞 工藤和真
五十嵐喜芳賞 澤﨑一了
第1位が一体どれだけ凄いかと言うと、次々に賞状授賞者が登場して、10枚以上の賞状と副賞をもらったようだ。
挨拶する工藤和真。感涙にむせんでいる。そりゃそうだろう、こんな場で、これだけ表彰されるんだから。
ひょっとしたら自分も、と思ったであろう入賞者。無念の表情、諦観の表情、やり遂げた充足感の表情、いろいろ。
主催者発表では、今回の応募者は131名に上るとか。内訳は、
ソプラノ 79
メゾソプラノ 7
アルト 8
バリトン 23
バス・バリトン 2
バス 1
その中から本選に出られただけでも、これは凄いことなのだ。そのことをどうか入賞者も肝に銘じてほしいと思った。
講評の中で、高 丈二審査員長が「発声と言葉との関係が大事だ。聴衆に言葉が通じなければ、意味がないし、発声のいい人ほど、言葉も明瞭である。大きな声を張り上げすぎないように・・・・」などが印象に残った。
審査員、賞・賞金・賞品、過去第一位受賞者一覧
そう言えば、8番目の内田千陽の演奏中(16:20 C.A.)に、グラっと来て、一瞬場内がざわついた。後から知ったが、千葉北西部を震源とする地震で、東京は震度1ぐらいだったようだ。もし震度3以上だったら、演奏中断になっていたかも知れないし、この程度で済んで幸いだった。
#33 (文中敬称略)