ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

第53回日伊声楽コンコルソ@東京文化会館小ホールへ

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10人が残った本選を聞きに東京文化会館小ホールへ。

 

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愚亭が存じ上げている歌手は数名。ほとんどの方は初めて聞かせていただく。それぞれ3曲ずつ、概ね15分ほどで、10名、途中20分の休憩が入るから、2時開演で、終わったのが5時ちょっと前。そして審査中に、ミニコンサートが組まれていて、今回は17歳のヴァイオリニスト、森山まひるシベリウスのヴァイオリン協奏曲ニ短調。あまりこれまで聞いたことのない作品。30分を超える曲で、しかもかなりのテクニックを要する難曲だと思った。のびのびと弾きまくって、大喝采。17歳にしては、やや幼さの残る、可愛らしい姿。比較は無意味なれど、あの15歳の棋士藤井聡太くんがどれだけ大人びていたかということだろう。話が逸れた。

さて、コンクールだが、前半最後の二人のテノールは、どちらもよく知っていて、応援していたが、果たして大賞を取れるのだろうか。特に小笠原一規は選曲ミスでは?と思われるほど、低い曲を最初に持ってきて、彼の輝かしい高音を封印しているかのような印象。

澤崎一了(かずあき)は、馬力のある高音を次々に繰り出し、これでもかというほどの歌いっぷりで、場内からのブラーヴォが凄かった。ただ、やや一本調子の観は免れない。

後半、2番目に登場した別府美紗子、のっけから華やいだ雰囲気で歌い上げ、審査員の印象もきっと悪くないはずと期待したが。

9番目に登場した工藤和真、登場するなり、オーラのようなものを感じて、こりゃやりそうだという予感。なんとなくホセ・クーラを彷彿とさせるような雰囲気がある。果たせるかな、まあうまい!!こんな新人、今までどこで何をしていたんだろう。この時点で、彼の入賞は間違いないと踏んだ。強弱のつけかたや、間の取り方、バランス、ヴォイスコントロール、完璧なまでに見事だ!さらに、彼の自然な振りは、日本人ではないかの印象を与えた。とにかく声に凄まじい深みを感じたし、そこに嫌味もなければ、わざとらしさも何にもなし。

最後に登場した糸数 知(ちか)もうまかった。ひょっとして、工藤と争うのかと思わせたほどだったのだが、所詮は素人の耳、審査員は違った評価をしたようだ。

ということで、結果は、

第1位 テノール 工藤和真

第2位 テノール 澤﨑一了

第3位 ソプラノ 内田千陽

歌曲賞 工藤和真

五十嵐喜芳賞 澤﨑一了

第1位が一体どれだけ凄いかと言うと、次々に賞状授賞者が登場して、10枚以上の賞状と副賞をもらったようだ。

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挨拶する工藤和真。感涙にむせんでいる。そりゃそうだろう、こんな場で、これだけ表彰されるんだから。

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ひょっとしたら自分も、と思ったであろう入賞者。無念の表情、諦観の表情、やり遂げた充足感の表情、いろいろ。

主催者発表では、今回の応募者は131名に上るとか。内訳は、

ソプラノ     79

メゾソプラノ    7

アルト       8 

バリトン       23

バス・バリトン 2

バス      1

その中から本選に出られただけでも、これは凄いことなのだ。そのことをどうか入賞者も肝に銘じてほしいと思った。

講評の中で、高 丈二審査員長が「発声と言葉との関係が大事だ。聴衆に言葉が通じなければ、意味がないし、発声のいい人ほど、言葉も明瞭である。大きな声を張り上げすぎないように・・・・」などが印象に残った。

審査員、賞・賞金・賞品、過去第一位受賞者一覧

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そう言えば、8番目の内田千陽の演奏中(16:20 C.A.)に、グラっと来て、一瞬場内がざわついた。後から知ったが、千葉北西部を震源とする地震で、東京は震度1ぐらいだったようだ。もし震度3以上だったら、演奏中断になっていたかも知れないし、この程度で済んで幸いだった。

#33   (文中敬称略)