ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ローザは密告された」

170814 原題:MA' ROSA (ローザおばさん)フィリピン映画。110分 監督:ブリランテ・メンドーサ

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骨太の社会派ドラマ。テーマは、貧困、汚職、腐敗、家族愛、麻薬。フィリピン映画というのは、多分初めて見たような気がする。滅多に日本で上映される機会がないから、仕方ない。本作は、アカデミー外国語部門への出品作で、カンヌ国際映画祭で主演女優賞(ジャクリン・ホセ)を取ったことで話題になった。やや暗いテーマゆえか、東京では、単館上映。ちょっともったいない。

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マニラ郊外の貧民街でコンビニを切り盛りするローザには、ぐうたら亭主と、男女二人ずつの子供がいて、貧しいながらも、まあまあ幸せな生活を築いている。家計の助けになればと最近、少しだけだからと麻薬の扱いも。

ある日、突如地元警察のガサ入れ。20万ペソ(50万円弱)払えば見逃すと言われるが、もとよりそんな大金があるわけでない。夫婦は逮捕され署に連行されてしまう。売人を密告すれば、保釈してやると言われ、売人を売るが、所持金不足、足らない5万をお前らが払えば釈放と迫られる。とんでもない腐敗ぶりだ。

子供達が必死であの手この手でかき集め、最後はローザ自身が夜の街に出て、調達し、警察署に戻る。途中、屋台で串揚げを頬張る先には、店じまいにいそしむ一家の姿が。改めて家族の絆を強く意識するローザだった。

その辺のカメラで全編動画撮影したそうだが、揺れ具合が心地いいほどドキュメンタリー感を漂わせる。警察の腐敗ぶりは、アメリカや中南米など、かなり常態化しているようだが、ここのはヘドが出るほと酷い。日々裏金づくりのためにガサ入れと密告(司法取引ではない)を通じて、必死で生きる市井の人々を、ただ苦しめる存在、これを告発したかった監督の思い入れを強く感じた作品。

どんな環境下でも、たくましく、清々しく生き抜くローザを演じたジャクリン・ホセの見事な演技に脱帽。

#53 画像はALLCINEMA on lineから