ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「三度目の殺人」

170913 原案・脚本・編集・監督:是枝裕和

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これぞKORE-EDAワールドって言うやつかな。実に緻密な構成で、画面に観客を強引に引きずり込み、なおかつ、見終わっても、なにかモヤモヤ感が漂いながら出てくる典型的な作品。

そして父になる」と同様、外では優秀で、出世街道まっしぐら、内ではほとんど家庭崩壊のような人物、重盛(福山雅治)が演じるのは弁護士。同僚のヤメ検吉田鋼太郎)から持ち込まれた古い事件の犯人(役所広司)を国選弁護士として弁護しようとしている。

壮絶な過去を持つこの殺人犯、一見穏やかで対応もすこぶるソフトなのだが、何を考えているのか、発言内容をコロコロと変え、重盛を翻弄していく。自分が雇われていた会社の社長殺しの真犯人なのか?当初は簡単に見えた事件が、謎だらけの厄介な事件に変貌していく。

内容が難解なのは、メタファーが多用されていて、一体その場面が何を指しているのか、観客に謎かけしているように見える。それを監督は楽しんでいるんだろう。

二度しか殺人事件を起こしていないのに、三度目とは?これも謎のまま、観客の思考に委ねているように見える。

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接見室で、何度も出てくる福山vs.役所の息詰まるような対決が見ものである。最後の方で、この二人の横顔がガラスの反射で重なって映る場面はとりわけ秀逸である。

監督は、今の司法制度・裁判制度への批判も忘れない。判事、検事、弁護士が密室である種”取引”をして、なあなあで収めてしまう。本作では、最後の最後に犯人が自分はやってないと、これまでの供述を180度覆す証言をして、重盛も一旦それを信じてやり直しまで一時は覚悟するが・・・結局、”流れ”には逆らえずに収まるところ収まると言う、誰にとっても、なんとも後味の悪い結果が待っている。

犯人と奇妙な接点を持つ、殺された社長の娘咲江を広瀬すずが好演。

結局、真犯人は誰だったんだ!?

#63 画像はALLCINEMA on lineから