ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

J.S.バッハ ミサ曲 ロ短調@東京オペラシティコンサートホール

170918 地元の合唱団仲間が出演するので、久しぶりにロ短調を聞きに行った。

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初めてこの曲を聴いたのは11年前のベルリンの、例のカラヤンホール、旅の疲れから、うつらうつらしながら聴いていた記憶がある。したがって、どんな曲だったか、ほとんど覚えていない。その意味で、聴くのは今回が初めてと言うに近い。

会場で配布されたプログラムの解説によれば、この曲はバッハの作品のみならず、あらゆる音楽作品(大きくでたなぁ)の”最高峰”という肩書きで呼ばれることが多いとか。思わずホンマかいなとツッコミを入れたくなる。まあ、バッハの真髄って、なかなか素人には分かりにくいし、最晩年ぐらいにやっと少し分かり始めるのだろう。

ロ短調と呼ばれる割に実際にはロ短調の部分はわずかだそうで、バッハの子供達は「大ミサ曲」とか呼んでいたらしい。時代が下って、1800年頃のドイツの音楽学者がロ短調ミサと呼び、それが定着したという風に解説されている。

たっぷり2時間の宗教曲となれば、眠気はどこかで生じる覚悟はしていたが、第1部MISSA⦅KYRIE, GLORIA⦆(演奏時間、約1時間)の7曲目あたり、やや単調な部分で、ウトウト。第1部の最後、CUM SANCTO SPIRITU IN GLORIA DEI PATRISは、快活なリズムで生き生きとした締めくくり。

今日の演奏は、指揮者、管弦楽団ソリスト、それに合唱団とも、一流どころで、見渡したところ、2、3階席までほぼ満杯に近い状態で、人気のほどが知れる。尤も、合唱団員が150人を超えており、その家族や友人・知人だけでも、相当な数に上るから、満員になるのは当然といえば当然かな。(11月に予定されている我が合唱団の定期演奏会にもこれだけ入ってくれればいいのだが・・・)

休憩の後は、第2部 SYMBOLUM NICENUM (CREDO)、第3部 SANCTUS、第4部 OSANNA, BENEDICTUS, AGNUS DEI, DONA NOBIS PACEM(後半もほぼ1時間ほどの演奏時間)を一挙に演奏。演奏する側も、聞く側も会場内が一体になったような盛り上がりを、たっぷり楽しめた。

ソリストたちの演唱がそれほど多くはないのだが、最もうっとり聴いたのは、第2部でのソプラノとアルトの比較的長い二重唱。ソプラノとアルトの美声が絡み合いながら、素晴らしいハーモニーを生み出していく効果をまざまざと体験。

半田美和子は以前から知っていて、その実力のほどは折り紙つき、一方アルトの谷地畝晶子は、今日初めて聴いたが、重量感のある朗々たる響きは大したもの。

エストロ秋山和慶と東響は、本拠地の一つが近くのミューザ川崎なので、これまで結構頻繁に聞かせてもらっている。今日のコンマスはロシア人のグレブ・ニキティン(このかた、我々の定期演奏会に伴奏者の一人として弾いてくれるという、今でも信じがたい話)、他にも顔なじみの奏者があちこちにいて、なんとなく落ち着く。

東京アカデミー合唱団は、団員数に厚みがあり、しかも各パートにバランスよく人数が揃っているので、地域の弱小合唱団から見れば、本当に羨ましい。よほどハードな練習を繰り返していたそうで、大変立派な演奏だった。

出番はあまりなかったが、テノール鈴木 准は、典型的なテノーレ・リリコで、お顔もそうだが、普段話す声も誠に爽やかな印象を受ける。魔笛のタミーノや、愛妙のネモリーノ、ドン・ジョヴァンニのドン・オッターヴィオなどはきっとぴったりだろう。

楽しみにしていた大御所、多田羅迪夫は体調不良で、急遽、合唱の指導にあたっていた成田 眞が代役に立った。このかた、押し出しも堂々としているが、声もなかなかのもの。問題なく代役を立派に務められたと思う。

この曲を聴くのは11年ぶりと書いたが、その時(2006.10)の記事があったので、当時のブログから以下抜粋。ほとんどウトウトしていたからか、肝心の演奏のことにはまったく触れていないが。

カラヤン・サーカス」と呼ばれたベルリンフィルの本拠地フィルハーモニー劇場でバッハのロ短調ミサ曲が聴けたのも嬉しかった。ここではダフ屋ではないが、中年男性が近づいてきて、自分が行けなくなったからと、額面価格20ユーロで譲りたいとのこと。即座に20ユーロを出したのは言うまでもない。確かに、このホール、川崎のミューザを更に大きくしたようなホールでステージの後ろ側の座席数の多いこと。演奏は勿論ベルリン・フィル、指揮はサー・ロジャー・ノリントン、Susan Gritton(S), David Danierls(Counter tenor), John Mark Ainsley(T), Detlef Roth(Br)

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ミューザ川崎はこれの小型版と言える。ステージの周囲360°全方位に座席があり、サーカスと呼ばれる所以だ。後ろ側は、やはりヴォーカルになるとまともには聴こえない。今回はまさにこのケースで、ちょっと残念。

#59 文中敬称略