ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

嵐のごとき65分、バッティストーニが振る第九@めぐろパーシモンホール

170924 午前中、地元合唱団の練習を終えて、都立大へ向かった。嘗ての合唱仲間も出演する第九を聞くためだ。一般公募には自分も応募したのだが、目黒区民優先ということで、あえなく落選。

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なにしろ、この顔ぶれだもの、出たくてしようがなかったが、目黒区在住者以外の枠は多分ほどんど僅かだったと思われる。

国技館の5000人第九でもお世話になった泉 智之が合唱指導に当たったが、漏れ伝わったところによれば、今や人気絶頂の若手アンドレア・バッティストーニがマエストロだから、絶対に成功させるべく、いつになくピリピリムードで合唱練習が行われたようだ。

その甲斐あって、見事に歌い終わり、団員の顔にも立派に歌い終えたという安堵の気持ちと誇らしさの入り混じった表情が印象的だった。

以前から速い振り方が話題になっていたが、昨年の国技館の第九で降った下野竜也も相当速くて、それまでの松尾葉子との違い歴然で、団員は一様に戸惑ったが、今日のバッティストーニは、下野を遥かに凌ぐ、疾風のような演奏で、普段72分ぐらいはかかる楽曲なのに、60分台で振り終わったと思う。

速ければ速いほどいいわけはないのだが、マエストロ下野によれば、ベートーベンの指示はそのぐらいなのだと解説してくれたのをしっかり覚えている。

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上手側のかなり前方に陣取ったから、コントラバスが一番近い楽器だった。自然に、彼らの演奏ぶりをたっぷり観察しながら聞いていたが、例えば3楽章で、延々、何十小節にわたりピッツィカートが続くことなど新しい発見があった。中央部あたりで聞いているとこういうことには気づかないものだ。全員ドイツ式の弓の持ち方だったが、4楽章はそれこそ必死で弓を動かさないと間に合わないような激しい演奏ぶり。

ホルンも強靭な演奏でさすが東フィルと感嘆!(ただ、4楽章での難所の一つでは、ほんの僅かズレがあったが、許容範囲。)

明治生まれで、日本で最も長い歴史を持つオケだが、今日の顔ぶれを見ていると、かなり若手ばかりが起用されていると感じた。130人も団員がいるから、いちばん若手を揃えたのかも知れない。

バッティストーニの振り方は、跳び上がり、のけぞり、ひねり、全身を大きく動かす、とんでもなくダイナミックなもので、分かりやすいといえばその通り。口も頻繁に開け閉めして、なにかわめいているのは明らか。合唱部分では、一緒に歌っていたはずだ。

ソリスト、盤石の布陣。言うことなし。

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打ち上げまでの時間、外で一人黙々とスマホをいじり、さらにせわしなくシガーをくゆらす。この後、ガラス戸を開けて、少し話をしてみた。まあ、ごく普通のイタリアの若者という感じで、気負いもないし、えらぶる姿勢もみじんも感じなかった。舞台上では、すでに巨匠の風格が。

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ソプラノは、お馴染み高橋絵理。第九はそれほど歌っていないと思うが、余裕たっぷりに笑顔を見せながら、立派に期待に応えてくれた。

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メゾの名手、富岡明子、多分、数え切れないほど第九は歌っていると思える。安定感抜群!

バリトン青山 貴はつい先日も日暮里のサニーホール・コンサートサロンでの独演会を聞いたばかりだが、緊張しながら、O Freinde・・・・の第1声を聞いた。いやぁ、鳥肌もんだった。テノール与儀 巧、東京音楽コンクール(第6回)で初めて客席で聞いたが、デビュー直後の初々しさが強く印象に残った。第1位のほか、聴衆賞まで合わせて受賞した時の姿が蘇る。随分成長したものだ。

#62 文中敬称略