ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ポルト」

171004 原題もPORTO。76分と短い。ポルトガル・フランス・アメリカ・ポーランド合作。製作(共同)・脚本・監督・編集:ゲイブ・クリンガー(本作が日本初公開作品、ブラジル人)

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ポルトガルポルトが舞台の詩情溢るる作品。キース・ジャレットのような物憂げなピアノのBGMがアーニュイな雰囲気を醸し出す。

開巻、朝の光を浴びて、みつめあう男女の横顔を上からのカメラが映し続ける。

すぐに画面がスタンダードサイズに切り替わり、解像度が粗くなる。なるほど、過去と現在をこうして切り替える手法だと観客に理解させる。だが、この男女がどのような過去を持ち、どのようにして知り合ったか、もどかしさを覚えるほどゆっくりと解明していく。

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リスボンから家族を置いて単身ポルトに来ているアメリカ人、ジェイク(アントン・イェルチン、ロシア人。昨年6月、自宅前で事故死。27歳とは!この作品が遺作となった)と、カフェで目があったフランス人留学生のマティ(リュシー・リュカ)はこの街では異邦人同士。

実は、マティにはパリ大学で考古学を通じて知り合ったポルトガル人のパートナーがいて、娘までもうけていることは次第に分かってくる。

引越し荷物のアパートへの運び上げを手伝ってもらうだけのつもりで、誘ったのか、それ以外の目論見があったのかはビミョー。そのまままだ家具もない部屋で一夜をともにするジェイクとマティ。

二人の感情の起伏は同じ軌跡を辿らない。その一夜の感情に浸り続けようとするジェイク、あくまでも一夜限りと割り切ろうとするマティ・・・ドゥエロ河畔でうつろう光と共に静かに展開していくラブストーリー。ゆっくりと日が昇り、余韻を残しながら沈んでいく。

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二人が夜更けに食事したレストランの内側と外側。メニューらしき図柄が重なる。赤い傘が印象的に使われている。

ポルトはその昔、出張で一度だけ行ったことがあるが、残念ながら、街をゆっくり見て回る時間がなかった。ドゥエロ川が街並みに陰影を与えて、なかなか絵になる素敵な都会だ。

もともとはギリシャを舞台にする予定だったところ、諸般の事情で、急遽ポルトに変更、脚本を書き換えて撮影に臨んだらしい。

#68 画像はIMDb、およびALLCINEMA on lineから