ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ノクターナル・アニマルズ」

171104 原題も:NOCTURNAL ANIMALSとまったく同じ。こういう邦題の付け方は楽だし、そして変にいじらない方がいい。米 116分。製作・脚本・監督:トム・フォード(56歳、ファッション・デザイナーでもある才人)

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上のタイトルの下に「人は誰かを愛したら、放り出してはいけない」という警句のような1行が見える。そう、この作品、愛する人物に才能がない(少なくとも自分よりは)という打算見え見えで捨てたことで、特殊な方法で仕返しをされるという、こわ〜いお話。

冒頭、超のつくおデブの年増女が素っ裸で踊るシーンが延々と映し出され、なにか、嫌〜な気分に。でも、このシーンは何かの伏線でもないし、作品の展開にはほとんど関係がないと思われるが、トム・フォードとしては何らかの意味合いを持たせているんだろう。

金銭的にはなんの不自由もなく極めて安定した生活だが、ダンナ(アーミー・ハマー)が女を作ってることを知り、精神的にはすこぶる不安定な主人公のスーザン(エイミー・アダムス)、ある日、20年前に別れた(女の方が”捨てた”形)エドワード(ジェイク・ギレンホー)から小説の原稿が送られてくる。

読み始めたところで、映画は小説の世界に入り込む。トニー(ギレンホール)はカミさんと一人娘を連れての夜間ドライブ。途中から”あおり”や割り込みを繰り返され(今、日本でもちょうど話題になっていることでもあり、この30分はかなり怖い)、挙句にタイヤをパンクさせられて、カミさんと娘を連れ去られてしまう。抵抗しようにも、相手は屈強な3人組だし、人気のない荒野では、どうにもならない。

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翌朝、地元警察に届け出て、一緒に実況検分に行くと、なんと二人の惨殺死体を発見。それから一年後、地元警察のボビー(マイケル・シャノン)から犯人が上がったという連絡が。ところが、状況証拠だけで、不起訴に。だが、癌で余命僅かと告白するボビーは、なんとか個人的にトニーを助けたいと、主犯格の二人を脅して荒野の一軒家に監禁・・・。

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⬆︎ボビー(マイケル・シャノン)は、当初から非協力と思わせるほど無愛想だが、実はトニーには同情し、リベンジをさせたいと考えている。何か自分の家族も不幸にして亡くしたらしいと思えるセリフが出てくる。マイケル・シャノンの眼光の鋭いこと!この作品でアカデミー助演男優賞にノミネートされた。

この小説のエンディングは、撃った犯人の反撃にあい、トニーも倒れた拍子に自分の持ってるピストルが暴発して死んでしまうのだが、読み終わったスーザンには、とうてい小説の話には思えない。更には小説としての完成度も高く、エドワードの力量を認めざるを得ないのと、内容を確認したい。しかも、亭主はとっくに自分を離れている今、久しぶりにエドワードに再会したい。

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メールで約束した時間になっても、約束のレストランに現れないエドワード。一人黙々と杯を重ねるスーザン。そして、周囲から誰もいなくなる。暗転してジ・エンド。

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彼女の経営する会社には、こんな暗示的なアート作品が!

エドワードは、生きているのか、もうこの世にはいないのか、それは見た人に任せるトム・フォード。うまいねぇ〜、この辺りは。

#74 画像はIMDbから