ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ローガン・ラッキー」

171208 原題:LOGAN LUCKY (ローガン家、ツイてる)監督:スティーブン・ソダバーグ、製作:チャニング・テイタム(共)

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競馬やサッカー、野球などのビッグスポーツイベントで、警備が手薄になるのを狙って銀行強盗という定番の手口。今回はコカコーラ600という、ノースカロライナにあるシャーロット・モーター・スピードウェイで行われる耐久レースの日に、巨額の売り上げを横取りしようというお話。

なにしろ3年ぶりに映画監督に復帰したソダバーグ作品ということで、注目されたのだが、宣伝にほとんど金をかけないという方式採用で、全米での観客動員は当初見込みを大きく下回ったようだ。

日本でも、この作品、あまりに話題にもならず、この日も、大劇場にもかかわらず寂しい入りだった。邦題のつけ方も工夫が足らず、なんのことだかさっぱりで、これも響いたと思う。

ローガンというのは、ウェスト・ヴァージニアの田舎住まいの一家の名前。この家のジミー(チャニング・テイタム)とクライド(アダム・ドライバー)兄弟は、これまでさまざまな不運に遭遇し恵まれない環境にあり、土地の人々からローガン・カース(ローガンの呪い)などと言われる始末。

妻に去られたジミーの唯一の楽しみは別れた女房に親権が移ってしまった一人娘に会いに行くこと。それも近々、遠くへ引っ越すことに。無口の弟クライドは、イラク戦争で帰国寸前に片腕を失い、義手でバーテンダーとして生計を立てる日々。でも、兄弟仲はすこぶるいい。

そんなしょぼくれた環境から脱しようと、ジミーは一大決心の末、レースの売上横取り作戦を思いつく。綿密周到な計画を立て、成功への十ヶ条を弟や仲間達にも絶対守るよう指示。いよいよ実行当日を迎える。

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仲間の一人で最重要な役回りのジョー・バン(ダニエル・クレイグ)を刑務所に訪ね計画を打ち明け、協力要請。こんなやばい話、ムショ内でやるかね!監視カメラに映ってないか、隠し録りされてないのかとか、そぶりも見せない。

結局、ジョー・バンをアッというような巧妙な手口で脱獄させ、計画に参加させた上、ムショに戻すって!?なんかいかにも頭の悪そうな連中ばかりで、そんなことできるわけ、ないよねぇ。

ところが、どっこい・・・

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真空装置パイプで運ばれてきたゲンナマの行き先はこんな風だ。パイプを少し向きを変えてやれば・・・、

てな塩梅でまんまと成功。だが、そこからがジミーの腕の見せ所、全額をどこかに持ち出すようなことは考えない。大半はその辺に残したままだ。しかも、ほんのわずかでも世話になった人物への恩返しも決して忘れない、鼠小僧風なふるまいに世間から糾弾されることもなく、ハッピーエンド・・・かな?

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終幕でやっと登場する大物、ヒラリー・スワンク扮するFBI捜査官。被害側も総額を把握しないまま、保険金が下りたから、捜査依頼を取り下げ、事件は表面上、幕引き。

ラストシーンは、クライドの働くバー、それぞれハッピーになったもの同士、乾杯。反対側に座った女からクライドに、「ねぇ、こっちにもいっぱいくんない?」ここで、クライドの顔に初めて笑顔が。そして、出口近くの台の上に、クライドの義手がグラスを持っているところで、ジ・エンド。ローガン家の呪い、まだ続きそうだ。

弟を演じたアダム・ドライバー、素晴らしい!無表情、無口だが、どこかひょうきん。すっとぼけた味をうまく出している。最近、「沈黙」や「パターソン」でも見ているが、いろんな役を巧みに演じ分けられる名優である。

劇中、一人娘がビューティー・コンテストに出場、自分の番になってスポットライトを浴び、用意した演目をやろうとしたら、やっと出番に間に合った父親(テイタム)の姿が遠くに。すると、歌い出したのは、パパがいつもくちずさんでいた懐かしい地元の歌、カントリー・ロードである。甲高い彼女の声に聴衆の低い声が次第に和して、最後は全員での大合唱!この場面にはなぜかウルウル。

#82 画像はIMDbから