ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ルージュの手紙」

171220 原題:SAGE FEMME(助産婦)117分 仏 脚本・監督:マルタン・プロヴォ

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30年も前に姿を消した、父親の再婚相手が突如自分のもとに。さりげなく「あたし、癌になっちゃって」とか言って少しは同情心にでもすがろうとしたのか。到底素直に受け入れることなどできない。しかも、この継母が去った直後、父親は傷心のあまり、自殺していた。

もはや身寄りもなく、酒、たばこにおぼれギャンブルで多少の金を作って自堕落に生きる継母に対し、助産婦で忙しい日々にありながら、見捨てることができず、すこしずつ距離を縮めていく。

たとえ血は繋がっていなくても、父親を通しての絆はある。服装のセンスがなってないとか、嫌味ばかり言う女だが、継母は継母、世話を焼くことで実母実父にはかなわなかった親孝行をしているかのようだ。人は一人では生きていけないと自分に言い聞かせているようにも。

二人のカトリーヌが好演、見応えのある作品に。ラストはイミシンだ。多分、あれは余命いくばくもない継母が、セーヌ川に・・・。

ルージュの手紙というから、なにか赤い便箋にでも書いた手紙かと思ったらさにあらず、口紅の方だった。

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でっぷりしてしまったが、目力には相変わらず凄みがあるカトリーヌ・ドヌーヴも74歳。それにしても、引力が顔にまでたっぷり及ぶことを実感。

カトリーヌ・フロの方も作品では49歳とか言っているが、実際は61歳、ひとまわりも若い役を演じるのだから、大したもの。

それと本作を楽しみにしていたのは、昭和34年(1959)に封切られたアラン・ドロンの日本でのデビュー作「お嬢さん、おてやわらかに!」に出演したいたミレーヌ・ドモンジョ(79)が端役で、ほんの数分ほど登場、カメラが少し引いて撮っていたからか、昔の姿を彷彿とさせてくれたのが嬉しかった。

題名の助産婦だが、男性もいるので、日本語も助産師というらしいが、フランス語でもsage femme は女性なので、男性の場合は、その後にhomme(男)をつけるか、最近はmaïeuticienとかaccoucheurいう専門用語も使われると、劇中のセリフにも出てくる。実は主人公の一人息子が突然助産師になりたいと言い始めるシーンが出てきて、母親を慌てさせる。

#89 画像はIMDbから