171229 昨年末は自分が合唱団の中で歌っていた杉並公会堂で、予定されていたマエストロが登場しないという前代未聞の”事件”があり、忘れ得ぬ演奏会となったが、今年はじっくりと聴く機会があった。
今回はそれこそ一音も逃すまいという意気込みで、一心不乱に聞き入った。普段、眠気を催す3楽章も、こんなにも美しい調べの連続だったかと感心するほどだったし、こんなところで、長く美しいピッツィカートが入るんだなど、新しい発見も。
地元(蒲田)合唱団仲間がソプラノで出演するということでのご招待。2階の最前列の中央、真正面にマエストロが見える位置に陣取る。
この管弦楽団、初めて聴くが、⬇︎こういう内容である。
コントラバス奏者から指揮者に転じた(依然コントラバス演奏も続けているそうだが)古澤直久が率いるオケで、最終行に、プロアマ奏者混合の新形態オケとある。団員リストにはその区別がないから、どなたがプロかアマかは判断不可。いずれにしても、確かに珍しい編成の楽団である。
今日はご自身が専門とする楽器ゆえか分からぬが、コンバス10本並べた。全員独式の持ち方。ホルンも6管編成。前に4人、後ろに2人という布陣。通常だと前列の客席から見て右端が1番だと思うのだが、今日は2番の女性が難しいパートをほとんど吹いていたのは、いかなる事情なるや。ついでながら、この奏者、2階席からでも目立つべっぴんさん。
ほかに、ちょっとしたハプニングというか、珍しい光景が2度ほど。最初は、多分体調問題だろうと思うが、1楽章前半で早々と男性チェリストが退場。1楽章終了時点で戻って来たが、マエストロから目で訊かれたのだろうが、なんども「もう大丈夫です!」という風に首を振っていた。
2度目は、1楽章後半、ティンパニーの連打の場面で下手からぬーっとパーカッショニストが現れ、なにげにティンパニーに近づいて、立ったままで連打のお手伝いをしたこと。よほど強力な連打をマエストロが要求したということか。珍しい光景だ。
さて、第1部では、多分、この若いマエストロが個人的に好きなのだろう、ジョン・ウィリアムズの「スーパーマン」と「スター・ウォーズ」のテーマ音楽を演奏、2曲とも金管の吠え方に特徴があるが、普段、映画館で大音響で聴いているせいか、「あら?」というほどで、もっと吠えまくってくれないかと感じたのは私だけか。
それと、「スター・ウォーズ」演奏直前、弦の大部分の奏者とトロンボーン奏者がLEDで赤、青、緑のライトを予め弓(トロンボーンは管の側面)に両面テープで貼り付けていて、細いコードでつないだ脇腹付近のスウィッチを入れると一斉に輝き、ちょっとしたどよめきが。こういう演出はなかなか楽しくていいものだ。
このホール、音響がいいのか悪いのかよく分からない。自分の聴力が衰えたとは思いたくないのだが、なんとなく全体的に響きが弱いように感じられた。オケも合唱団もバランスが素晴らしいだけに、ちょっともったいないような気がしてしまった。
ソリスト陣では、唯一知っているのが澤崎一了(かずあき)。何度か聴いている。アルテ・リーベの空間では彼の音量は拾いきれない。7月には東京文化会館小ホールでの日伊コンコルソでオペラアリアを3曲聞かせてもらって、すごい歌手がまた一人出現して嬉しく思った。この時は惜しくも優勝は逃したものの、第2位と五十嵐喜芳賞をもぎ取ったのだから大したもの。
今日のような大きな会場で聞くと、やはりとても自然で、柔らかな発声が小気味よく響いた。この人、図体の割にはにかみ屋という風情、大変腰が低く、ファンをとても大事にしているようで、気軽に写真撮影になんども応じていた。気は優しくて力持ち?!
他のソリストの方々もみなさん、持ち場をしっかり守っていらして、安心して聴いていられた。典型的な沖縄の姓をお持ちの照屋博史はバスというより、ハイバリに属する声質と思った。例のちょっと長いパッセージ、und freu-denのファなどは軽々と出すのだが、欲を言えば、出だしの O Freun-deや、最後のvollereなどは、もう少し重みが欲しいかな。
#83 文中敬称略