ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ダンシング・ベートーベン」

180104 DANCING BEETHOVEN スイス/スペイン83分

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ベートーベンの第九交響曲をバレエで表現するという、伝説の振付師モーリス・ベジャール(2007没)の斬新な試みが2014年に東京で再現されたが、本番までのバレエ、オケがそれぞれ悪戦苦闘しながら、実現に至る過程を克明に記録したドキュメンタリー。

冬、ローザンヌ、春、東京、夏、ローザンヌ、秋、本番東京(東京文化会館)と4つに分けて、全体の3/4をバレエ、残りをオケの練習(イスラエル・フィル、ズービン・メータ指揮)に割り振って構成。全体の統括を振付師のジル・ロマンが、そしてインタビューを娘のマリヤ・ロマンが担当して、解説を加えて行く手法。

ジル・ロマンの絶大な信用を得て抜擢されたウクライナ出身のダンサーが、妊娠で降板したり、ダンサーの中に、稽古中に脚の筋肉断裂で本番に間に合わず、泣き出すものが出たり、その他大勢組の中に大事な練習に出られないと告げるや、その場で首を宣告されたりと、裏事情、結構大変なのだ。

第九のシラーの詩にある”人類はみな兄弟”の精神に則り、それを表現したいというのがベジャールの当初から一貫した精神であり、それをしっかりロマンが受け継いでの東京公演の舞台となって結実したわけで、本番の舞台ももう少し見せてくれてもよかったと、その点だけが残念!でも、まあよくできたドキュメンタリーであるには違いない。

オペラはよく見に行くのに、バレエはさほどでもなかったのだが、最近、すこしずつ興味を持ち始めている。本作の稽古風景では、みな鍛え上げた体幹がまったくぶれずに踊る姿には圧倒される。

それにしても、アジア人には申し訳ないが、白人、黒人たちの脚の長さ、お尻の引き締まり具合、まっすぐ上に上がる脚線のきれいなことは、ため息が出るほど美しい。ネアンデルタールだかクロマニヨンだか知らないが、祖先から受け継いだに過ぎない体型は羨ましい。ピテカントロプス・エレクタスや、シナントロプス・ペキネンシスでは、どうも分が悪い。

監督のアランチャ・アギーレ(Arantxa Aguirre)はマドリッド出身の53歳の女性。因みに、Arantxaという名前からすると元々はバスク人だろう。

#1 画像はIMDbから。