180108 地元合唱団のピアノ伴奏および歌唱指導もしてくれている吉田貴至先生の企画する音楽会へ。180席はすべて埋め尽くされていて、しかも9割は女性。それほどの人気ぶりは好企画であることに尽きるが、出演者が全員イケメンばかりということに負うところが大きい。
冒頭の挨拶でも触れられていたが、テノール1、バリトン3というのはこの種のコンサートとしては確かにバランスが悪く、選曲が難しいところだ。しかし、名手吉田の手にかかると、そのアンバラスさを逆手にとって構成しちゃうからすごい。
⬆︎左側3人は常連で、過去なんども聴く機会があったが、小林啓倫を聞くのは初めてである。バリトンでも三者三様、声質に微妙な差があるところが、聴いていて実に面白かった。
大沼の声は柔らかく、往年のディートリッヒ・フィッシャーディースカウを彷彿とさせる。加耒の声は細身の身体からこんな声が出て来るのかと思うほど、深みのあるふくよかな声。対して、小林のはくっきりとした声質で、聴きながら、昔どこかで聴いた外国人バリトンの声に似ているなぁと思いつつとうとう思い出せない。
一人でテノールを背負う形になった新進気鋭の金山は、伸び盛りで、昨年末も五島育英財団海外派遣研修生最終選考会で聞いたばかりだが、外連味のない歌いっぷりで、人気急上昇中。終演後も彼に群がるおばちゃんたちの長い行列が出来ていて、声をかけられたのは、30分も過ぎた頃だった。
演目:
全員 オペラ「椿姫」から”乾杯の歌” G.Verdi
大沼 ”音楽に寄す” F. Schubert
金山 ”たぐいなく優美な面影”(Vaghissima Sembianza) S. Donaudy
小林 オペラ「フィガロの結婚から」”もう飛ぶまいぞこの蝶々” W.A. Mozart
加耒 オペラ「アレコ」から”月は高く輝く” S. Rachmaninov
全員 オペレッタ「こうもり」から”夜会に行こう” J. Schtrauss
ーーーーーーーーーーーーー休憩ーーーーーーーーーーーーー
全員 荒城の月 滝廉太郎
加耒 初恋 越谷達之助
小林 木兎 中田喜直
大沼 カロヴァ 山田耕筰
金山 ◯と△の歌 武満徹
大沼・加耒 オペラ「ドン・ジョヴァンニ」から”シャンパンの歌” W.A Mozart
金山・小林 オペラ「愛の妙薬」から”言いたかったのは愛の妙薬のことです”
G.Donizetti
全員 オペラ「セヴィリアの理髪師」から”私は町の何でも屋” G. Rossini
アンコールは「こうもり」第2幕から”われら手をとり”("Bruderlein und Schwesterlein")と「メリー・ウィドウ」から「女、女、女!」。
合間合間の4人のトークが絶妙。一番若い金山がいじられ役。加耒は正統派の進行ぶりで、いわゆる優等生タイプ。これに大沼がさんざんツッコミを入れるというパターン。いつもながら随分笑わせてもらった。
肝心の歌唱では、各自、自分の持ち味をたっぷり示したと思うが、とりわけ最後の演目、「私は町の何でも屋」をテノールまで入れて、4人で歌いまくった技巧には完全に脱帽!
終演後、撮影大会となり、出演者とのツーショットを熱望する合唱仲間の女子たちのため、ひたすらシャッターを押しつづけた。自分が映った写真は一枚もなし。
#1 文中敬称略