180120
歌劇団Kamite主催の第2回公演はプッチーニの二本立て、「ジャンニ・スキッキ」と「ラ・ボエーム」。
再び、青栁X江口組の出演で早めに申し込んであった公演。先週は府中の森芸術劇場で「カヴァッレリーア・ルスティカーナ」を見たばかり。今回はラ・ボエームで再びカップル役で登場。どちらも相手が死んでしまうという悲劇ながら、ラ・ボエームの幕切れはあまりに切ない。
夫婦でロドルフォとミミを演じるのは、これで数度目か。照れ臭さも多分あるんだろうが、息のあった演技で、こちらも安心して見ていられる。
かなり変わった舞台設定と演出で面食らう場面も少なからず。でも、面白いと思ったのも事実。パリ下町の屋根裏部屋の設定だが、室内なのに、すぐそばに街灯が立っていて、室内でロドルフォとマルチェッロたちががやがややっていると、同じ平面で右側では通行人が通ったりと、まるでキュビズムの絵を見ているような錯覚を覚える。
変わっていると言えば、さらにカフェ・モミュスの2幕から3幕への転換がマジックのようにいつの間にかダンフェール・ロシュローの、当時パリ市内外を分ける税関のようなものがあった辺りになっている。モミュスのテーブルなどはそのまま残して。この辺りは、かなり無理があるように感じられる。このオペラをよく知らない観衆には恐らく???だったろう。
さらに、終幕、舞台中央には5段ほどの階段があり、そこにロドルフォが不自然な格好で座っているところから始まる。そして息も絶え絶えのミミが登場し、「はやくベッド、ベッド!」と思っていると、なんとその階段に寝かせるという、およそ考えられないような演出である。そこで、そのままミミは臨終を迎えるが、クッションもなく、背中は悲鳴をあげていたはず。
この公演で、マルチェッロを演じたバリトンの大川 博を初めて聴いたが、こりゃまた生きのいいすごいバリトンが出て来たものと、嬉しくなった。声の響きの素晴らしいこと、圧倒されっぱなし。
ま、でも少ない予算(多分)、限られたスタッフ・キャストで、ここまでの舞台を作り上げられたことは素晴らしいと賛辞を送りたい。
カーテンコール、真っ正面にスタンディング・オヴェーションおばさんに立ちふさがられて、憤懣やるかたなき思い。
マルチェッロを演じた大川 博。間違いなく注目株だ。
ミミ役の江口二美。役10年前、滝野川会館での同じ演目の時は、病人用メイクが凄かったが、それとは対照的に今回は割に控えめなメイク。
「ラ・ボエーム」の前に「ジャンニ・スキッキ」の公演を見た。上演時間がちょうど1時間の喜劇。ブオーゾが遺した遺産をめぐり一族郎党がみっともない騒ぎを演じるのだが、前半に超有名アリア「私のお父さん」が入るのを聴衆は楽しみにしている。
あとはドタバタ喜劇が展開されるだけと言うと言い過ぎかな?でも、この有名アリアが終わってしまうと、これと言ったアリアも重唱もほとんどないから、なんとなく寂しくなってしまう。あとは演出でどれだけもちこたえるかだろう。
三角頭巾をかぶったブオーゾは亡者姿で冒頭から最後まであっちへウロウロ、こっちへウロウロと、結局最後まで舞台から消えることはない。演者にはきつかったろう。
やはりO MIO BABBINO CAROはたっぷり聞き応えがあった。歌ったのは産後まだ五ヶ月の山口佳子。その声は力強く、そして品があって他に言うことなし。
#6 (文中敬称略)