180223 米 104分 監督:マイケル・グレイシー(初監督作品)「ラ・ラ・ランド」の作詞・作曲チームと組んで、実在したP.T.バーナムという型破りな男をミュージカルとして取り上げた作品。
なんども予告編で見てたが、それほど食指を動かされなかった。単なるハリウッド的な大掛かりなセットを組んで見せるだけのミュージカルような気がしたからかも。
まずは楽曲が素晴らしい。これはミュージカルでは欠かせない最大のポイントだろう。次に主役のヒュー・ジャックマンが見せる、聴かせる。特に歌唱については、「レ・ミゼラブル」でも実証済みだが、数あるハリウッドスターの中でもこれだけ歌える人は希少だろう。そう言えば、舞台でも「オクラホマ!」で大成功を収めている。
筋書きは別段どうということはないとうか、焦点がぼけて、やや散漫な印象を受ける。ロンドンまで行って、ヴィクトリア女王に接見したという実話は面白い。
出自は貧しくとも、創造力と行動力に優れた主人公バーナム(ヒュー・ジャックマン)はまずはサーカスで大成功を収める。⬆︎
成功したサーカスとは別路線で、当時のスェーデンの大歌手、ジェニー・リンド(レベッカ・ファーガソン)⬆︎をフィーチャーしてツアーを始めると、これも大成功!
気を良くしたバーナムは次々に新機軸を求め、先へ先へと突っ走る。次第にこうした姿勢に不安を感じたリンド、それまで私的にバーナムに好意を抱き始めていたものの、プライベートの関係には関心を示さず、飽くまでビジネス上の関係と割り切るバーナムにはついていけず、ついにバーナムとはたもとを分かつことに。
しかし、二人の仲を新聞報道でスキャンダルとして派手に書かれたことで、今度は愛妻のチャリティー(ミシェル・ウィリアムズ)が、二人の娘と一緒に、実家に避難する事態に。悪いことは続くもので、サーカス小屋が全焼、一夜にしてすべてを失うバーナム。だが、ここから盛り返すのは、展開としては定石。
家族も事業も取り戻す。
ヒュー・ジャックマンの演技・歌唱の素晴らしさに加え、そのほかの主演陣もほぼ全員が吹き替えやスタントを使わずに演技したというのも大注目。ザック・エフロンの歌も素晴らしいが、特筆すべきはゼンダイヤの空中ブランコ。自身で挑戦したというから抜群の運動神経を発揮したようだ。
唯一、リンドだけは吹き替えだったようで、演じたレベッカ・ファーガソン、もともと歌も結構いけるくちだけに、相当残念だったようで、満員の劇場で歌うシーンでは、自らの声で歌ったらしい。(映画では吹き替えられてしまった!)
サーカス映画と言えば、なにはさておき、「地上最大のショー」が思い浮かぶ。1952年作品で、これの元ネタの一部もバーナムだったそうだ。当時、こんな規模のサーカスを見て、腰を抜かさんばかりに驚いた日本人は少なくなかったろう。チャールトン・ヘストン、ジェームス・スチュアート、コーネル・ワイルド、ベティー・ハットンらが出演。
ついで1956年には「空中ぶらんこ」(Trapeze)で、バート・ランカスター、トニー・カーティス、ジーナ・ロッロブリジダが競演して話題を呼んだ。さらに、若かりし日のクラウディア・カルディナーレがやはり空中ぶらんこに挑戦した、ジョン・ウェイン、リタ・ヘイワース競演の「サーカスの世界」(1964)も記憶に鮮明に残っている。
本作はサーカス映画ではないから、こうした作品と並べるのはいささか的外れかも知れないが、サーカスを一部絡め、稀代のショーマンを主人公に据えたミュージカル作品。
#13 画像はIMDbから