ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「サーミの血」

180224 SAMEBLOD (英語ではSAMI BLOOD) スェーデン/ノールウェイ/デンマーク 108分、脚本・監督:アマンダ・シェーネル 昨年の第29回東京国際映画祭出品作。

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こういうあからさまな人種差別が起きていたこと、日本はおろか世界でも多分ほとんど知られてないだろう。1930年代の話というから、現代ではあり得ないだろうけど、驚愕の人類史上の汚点に違いない。

今ではラップランドと呼ばれる一帯で、スェーデンのほか、ノールウェイ、フィンランドなどの北部が含まれる。北極圏に暮らすイヌイット(旧名エスキモー)などと共通するのかも知れない。トナカイの群れを飼って生計を立てている。

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彼らとて、普通の人間であるから、教育も受けるし、中には優秀な姉弟も出てくる。映画はそんな一人の娘を主人公に据えて、現地で撮影している。一目でそれとわかる衣装を身につけていて⬆︎、本作ではスェーデン人からある種、隔離政策で、スェーデン人より劣る人種として扱われ、生徒がどんなに優秀だろうと進学も認められないという過酷な環境だ。

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⬆︎エレ・マリャが通う高校の校長、彼女の優秀さを認めるが、進学するための推薦状は断固拒否!

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⬆︎人類学の対象とみなされ、寸法を計られたり、素っ裸にされて写真まで撮られるという、まさに人権もなにもあったものではない。

それでも諦めきれないエレ・マリャは名前までクリスティーナと変えて、スェーデン社会に入り込もうとするも、高い壁に阻まれ、もがき苦しむ。一旦は諦めて、村に戻るのだったが・・・。⬇︎

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映画のスタートは、高齢のエレ・マリャ⬇︎が村の葬式に出席するため、何十年ぶりかで故郷に戻るところから、一気に十代のエレ・マリャにフラッシュバックする。ということは、家族も一族も捨て、念願を果たしたということだろうが、それが彼女の本当の望みだったのか。

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若い頃の主人公を演じた女優と、監督もラップ人とか。ま、そうでないと作れないとも言える。

#14 画像はIMDbから