ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ロッシーニとその時代」@東京文化会館小ホール

180325

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ロッシーニのマラソンコンサート。午前11時から夜の8時半までだから、5部全部出演する合唱の歌手たちには、実にハードな一日だったはず!

愚亭が聞いたのは午後7時からの最後の5部のみ。ちなみに、5部にも出演予定だった天羽明恵は、2部までで体調を崩され、代役に。その熊田祥子鵜木絵里とも、急遽登場とは思えないほど卓抜した技量を発揮して大喝采を浴びた。本来出演予定の歌手を楽しみにしていた反面、こういう嬉しい驚きもあるから、こうした”事故”もプラス思考で捉えればどうということはない。

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企画構成と当日の解説をされた小宮正安の話が面白かった。語り口も工夫されていて、すんなり頭に入った。それによると、上にもちょっと触れているけどスターバト・マーテル、いくら親しい友人と言え、私的な演奏と楽譜の門外不出を条件にして作曲するって、凄い話だ。

ところが腰痛など体調不良で、ジョヴァンニ・タドリーニに補筆させて完成。5年後、今度は、当の委嘱した人物が亡くなると相続人がそのあたりの事情不案内で、楽譜を売りに出したから、サァ大変!怒ったロッシーニは、楽譜を買い戻して、補筆部分を全部自分で作り直し(そのために1曲減ったが)世に出したというから、大した執念!ロッシーニの人となりの一部を垣間見る思い。

ユグノー教徒」を歌った代役の熊田祥子、初めて(多分)聞いたが、伸びのあるきれいな高音が持ち味らしい素晴らしいソプラノで、大満足。

「猫の二重唱」で登場したこれまた代役の鵜木絵里、つい先日、「フィガロ」で聞いたばかりだが、こうしたコミカルな役こそ彼女にうってつけで、登場するなり、もう笑いがこみ上げるほど、所作の一つ一つが楽しく面白い。もちろん歌唱も断然余裕。

次の「楽しい汽車の小旅行」というナレーション入りの演目がまた遊び心たっぷりで、さらに岡田 将の演奏ぶりも素晴らしかった。出発進行から、途中事故まであったりして、やっと次の駅で停車するまでの情景描写の巧みなこと!

「踊り」を歌った小堀勇介って、確かどっかで聞いたことあるけど、思い出せない。ともあれ、メリハリの聞いた歌唱はインパクト、おおあり。将来、楽しみなテノール

最後の演目「小荘厳ミサ」、実はこれが一番楽しみで今宵のチケットを買った次第。2年前の日声協主催「海の日のチャリティーコンサート」の合唱団の一人として歌ったのがこの曲。全曲ではなかったが、いいとこ取りで、楽しく歌ったのを鮮明に思い出す。

今日は小編成ながら、全員一流の歌手たちばかりだから、聞き応えたっぷり。ソロの押見朋子の凄さ加減にも参った。合唱団員、全員存じ上げている方々ばかりというのも嬉しかった。

#20 文中敬称略