ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「タクシー運転手〜約束は海を越えて〜」

180424 Taexi woonjunsa (発音からすると、どうやらそのままタクシー運転手のことのようだ)韓国 137分 監督:チャン・フン

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1980年5月の全羅南道の中心、光州で起きたいわゆる光州事件を扱った作品。前半は、のんびり、むしろだらだらと進行するだけに後半の緊迫感がいっそう迫るという趣向はなかなか上手い!

東京駐在のドイツ人ジャーナリスト、ペーター(トーマス・クレッチマン、「戦場のピアニスト」2002、「ワルキューレ」2008)が、現地リポートをするため現地へと。一方、一人娘の養育費捻出に頭を悩ませていたソウルのタクシー運転手、キム・マンソプ(ソン・ガンホ)がふとしたことで、10万ウォンで光州往復という情報を得て、ろくに英語もできないのに、金浦空港でペーターを待ち受け、光州へ。

途中迂回路を通ったりしながら、なんとか光州入りを果たす二人。しかし、そこで遭遇することになる恐怖の体験がどれほどのものか、まだ知らない。

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これから市心に向かうという学生たちを乗せたトラックを見つけ、さっそく取材開始。この時点ではまだ互いに待ち構える運命を知らないから呑気に交歓している。当時、この辺りでは西洋人は珍しかったらしく、大歓迎されるペーター。

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ついに本性を現す軍部。最初は再榴弾で威嚇するだけだったが次第に凶暴になり実弾で無辜の民を恐怖に陥れる。

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地元のタクシー運転手たちと些細なことで揉め始めるキム・マンソプ。日本人と違って、切れやすいが情にもろいところが韓国人らしい。いがみ合っているが、この後、光州脱出に際して、彼らの犠牲的精神に助けられることになる。実話に基づく脚本らしいが、この辺はかなり脚色してある印象。

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結局、光州で一夜を明かさざるを得なくなり、地元の運転手の自宅に招ばれ、一宿一飯の世話になるペーターとキム。手作りのキムチが振舞われ、くつろぐ一行。

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裏道を辿りながら脱出を図ろうとするが、検問で誰何され緊張が走る。なぜか検問所のトップが疑いをかけながらも、部下に指示して、検問を開けさせるが、同時に本部から外国人は一切通すなの指示が。ここからの脱出行は見せ場の一つ。

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ペーターに言われて、先に単独で脱出したキムは、道中の食堂で、テレビや新聞報道とは違う話を給仕のおばちゃんから知らされ、痛恨の思いに駆られ、来た道を引き返す。

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あれから23年後の2003年、講演会に呼ばれて空港に到着したペーターの姿が。必死でキムを探すが、あの時手帳に書いてあった連絡先はでたらめだったのだ。

クレジットの最後に2015年撮影のペーター本人が登場し、一度でいいから彼に会いたいと訴えるが、その後、亡くなったようだ。

光州事件から9年後の初夏、天安門事件が!

#31 画像はIMDbから

Taeksi woonjunsa

Taeksi woonjuns(そのままタクシー運転手のことらしい)監督:チャン・フン